特集:エージェンシーの利益創出のビジネスモデル研究
●S4 Capitalの儲け方:ファーストパーティー・データの起点はどこか
●Anomalyのユニークなトップダウン経営の事例
●エージェンシーモデルの4つの仕分け
●エージェンシーの「コミッション」「フィー」「成果報酬」の比率は
●エージェンシーとクライアントが折り合う「成果報酬」の基準
●コンサルティングのエージェンシー業界への拡大と淘汰
●補強ではないエージェンシーの人材の確保
●「オペレーティング・マージン」という指標
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●「スケール化」と称するマーケティング・プロセスの変化
●アマゾンがついに「不動産売買」サイトへ進出
スマートホームをIoT窓口から「人」を窓口にする意図
アマゾンがついに「不動産売買」サイトへ進出
スマートホームをIoT窓口から「人」を窓口にする意図
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■Amazonが今度は不動産売買の仲介サイトへ。大手ブローカー企業とのタッグを組む
2019年7月23日にAmazonによってリリースされた「不動産売買」の仲介サイト「TurnKey」を開設(上記図)したことは、米国でのインパクトが大きい。翌日にシリコンバレー在住の市川紘氏が秀逸な日本語解説を「Medium」にアップしている。本日時点で日経新聞も報じておらず、日本のパブリッシャー視点では到底解説しきれないレベルで「Amazonビジネスのツボ」を懇切丁寧に「速攻」で日本語解説されていた。氏は元々リクルートのSUUMO事業を担当していた経緯があり、「アメリカ不動産テックのカオスマップ解説」を提供する程の「不動産+テック」に近い領域の在米知識人だ。
図1:市川紘氏によるTurnKeyの解説 市川紘氏のMedium
出所:市川紘氏のMediumより
本稿ではこのAmazon×不動産の報道と市川氏の事実説明を元に、さらにその事実の「読みどころ」を深めてみたい。
英文リリース:
https://www.prnewswire.com/news-releases/realogy-l...
図2:今回Amazonが提携したRealogy社のブランド名リスト
出所:TuenKey sign up画面
アメリカ在住で不動産を借りたり買った経験があれば、誰しも知る「ブローカー」のホールディング企業「Realogy社」。上記はAmazonとの共同リリースだ。Realogy社傘下には「サザビーズ」「センチュリー21」という名前は日本でも馴染み深いはずで、その大手具合が想像できる。
図3:TurnKeyで紹介された、不動産購買時に付与されるAmazonベネフィット
出所:TuenKey sign up画面
左よりAmazonサイトで家を購入できた場合の価格によって、ボーナスギフトのランクが3つあり、
・1,500万円〜4,000万円級($150K-399K) =10万円($1,000)
・4,000万円〜7,000万円級($400K-699K) =25万円($2,500)
・7,000万円〜 級($700K+ )=50万円($5,000)
※区切りの良い数字にするために$1=100円にて換算
この「TurnKey」経由でユーザーが不動産売買を完了(クロージング)させた場合、ユーザーは最高5,000ドル相当のAmazonサービス・ツールを受け取れる。Amazonのスマートホームのールである「Amazon Echo(Alexa)」や「Fire TV」や「Smart Hub」などの機材・ツールが無料で、その設置手配まで受け取れる仕組みだ。
詳細は市川氏のサイトの説明に譲るが、今回のAmazonによる不動産売買への進出の鍵となる「Realogyとの提携」の主な仕組みは下記の通り。
1) Amazon.comサイト上に開設した「TurnKey」による不動産探しの集客
→オンライン不動産リスティングの競合大手「Zillow」等への後発からの対抗
2) ユーザーは「TuenKey」上で、オンライン物件探しの基本情報を入力
→同意の上で貴重なファーストパーティー・データの共有
3) 「TuenKey」は提携した「Realogy」傘下の不動産ブローカーと人的なマッチング(紹介)を行う。ソリューションは「人対人」
4) 不動産購入が完了できれば物件価格×2.5〜3%の仲介手数料がユーザーからエージェントに支払われる(不動産取引は複雑だが簡略説明)
5) その中からRealogyとAmazon TurnKeyにも配当コミッションが発生
上記までは、既存のオンラインの不動産紹介サイトと同じモデルであり、ステップ上で違うのは下記の1ステップのみ(重要)と言える。
+6) Amazonが成約者ユーザーにスマートホームをプレゼントという特典
表面上は、この+6)がユーザー側へのインセンティブであり、Amazonによる「金に物を言わせた」戦略に見える。当然ながらユーザー側は、2)を経由した「根掘り葉掘り」の許諾した情報をAmazon側に提供することになる。その提供の見返りとして、Amazonは6)「スマートホーム化」のさまざまなキット(道具=Alexa含む)の設置と費用を最高5,000ドル分提供する。Amazonとしてはこれで「ラストワンマイル」の家の中に入り込む契約ができれば、今後の家庭生活でのLTVを積み上げる戦略なのは理解できる。
このディスカウントをテコにアカウントを増やす方法は珍しい事ではない。すでにお馴染みの、新規サブスクアカウントを獲得するためにお試しキャンペーンで「最初の50ドル、無料!」等が新興デリバリーサービスやネットの回線契約等で、「初回割引」や「クーポンどうぞ」という既存サービスの延長だ。これが「家を買う」ためとなれば数千万円の分母から、5,000ドル(50万円相当)をどーんと差し上げる破格の施策だ。
生活者=人のラストワンマイルの接点を握っている人がいる
今回のAmazonの不動産プラットフォームへの進出の解説は、今後日本語のメディアでも報じられるだろう。その中でもMAD MAN読者が注意して見ておきたいのは、
・Amazonによる、2017年のホールフーズ・マーケットの買収
・Amazonによる、今回のRealogyグループとの提携
との共通点だ。
「Realogy」は言わば、不動産仲介の「LVMHのような束ねた超大手」。日本の読者でも知る「サザビーズ」だけでなく、米国のプレミアム都市での「牛耳る」複数のブローカーを束ねる企業である。この会社と「このタイミングで」組んだというAmazonのアナログな狙いを知る事に価値がありそうだ。
例えば配車アプリのUberが・・・
続きはMAD MANレポートVol.56にて
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