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●S4 Capitalマーティン・ソレル氏が説明するファーストパーティー・データ区分
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S4 Capitalマーティン・ソレル氏が説明するファーストパーティー・データ区分
MAD MANレポート2019年5月号vol.54の冒頭で『「ファーストパーティー・データ」の誤解を解く』を掲載した。その号において、読者お馴染みの「火星人」を例えとして登場させ、さらに「夫婦の誕生日プレゼント」の例を使って、くりかえしファーストパーティー・データへの誤解を紐解いてみた。こうしてMAD MANレポートにてくりかえし説明するのは、現在の日本企業(日本マーケット)が、「企業内に転がっている過去の有象無象データ」「そこいらの街に落ちていたデータを自分で集めたので私のデータ」として、「これもそれもファーストパーティー・データ、自慢!」と安心している気配があるからだ。
「何でもかんでも、ファーストパーティー・データ」という勘違いに対して、DIGI DAY英語版がマーティン・ソレル氏(元WPP創設者、現S4 CapitalのCEO)の買収目線を通して、大企業向けに区分け説明をしている。DIGI DAY日本語版は、英語版では伝えられているマーティン・ソレル氏の意図をよそにいつものごとく直訳を貼り付けているだけ。英文版に戻ってソレル氏が見極める区分けを、生々しくデータ企業の名前を取り上げて紹介する。ソレル氏(74歳)はどこまでも現役以上ですごい。
■ソレル氏が仕分けしてくれたファーストパーティー・データの線引
ソレル氏が具体的に、大企業を相手しているはずの「巨大データ会社」をやり玉にして、区分を説明してくれている貴重な解説だ。
ソレル氏がファーストパーティー・データとして認めるデータ
・「Markle/Dentsu」
・「LiveRamp」(現在独立企業。買収、買い、ならば、これら)
認めないデータ、買収しないデータ
・「Acxiom/IPG」
IPGはAxiomの中のファーストパーティー=LiveRamp抜きで買収してしまった
=以外のゴミを買った)
・「Epsilon/Publicis」
PublicisはAlliance Dataの中のファーストパーティー抜きで買収してしまった
=ファースト以外のEpsilonを買った。MAD MANレポート5月vol54号説明
(Publicisの購入金額は4,900億円!)
と述べてくれている。
IPG、PublicisはWPP、Omnicom、Dentsuらと並ぶ世界5大エージェンシーグループ
<記事の言外>
「WPP傘下のデータ企業 Kantar」
WPPはこの1年売却したくてしたくてKantarを売りに出してるけれど、誰も希望価格を出してくれない。
一部報道では、上記のデータ会社を全て「ファーストパーティー・データ」と括ってしまっている状況を74歳のソレル氏が線引きしてくれた構造だ。では、その狭義ファーストパーティー・データの「線引きの基準」はどこなのか、その説明が下記だ。企業規模の大小で分けて、大企業「タイタニック:大企業用(上記)=地球上」と、小=「船底の穴:DNVB/D2C用=火星上」に分けて説明する。
現在、日々大手企業が実施しているマーケティング活動の大半は「そうは言っても、目の前の量販はどうするのだ」に対する「対処策」が大半だ。この現状を「大企業=タイタニック号=地球上=マスメディア(TVを含む)」という仕分けとしてみた。極論を承知でMAD MANレポート上での説明論理では、これらは「未来価値の少ないデータ」区分している。
「地球」と「火星」例として登場させたのは「そうは言っても、目の前の事」にも日々対処しなくてはいけない企業ジレンマを「地球の上(眼の前の事)」と表現し、「火星の上」を「ほんとうは直ぐ取り掛からないといけないけれど夢の別世界」として区別した、いわば逃げ道である。
日々の「ザ・マーケティング業務」は、マーケティング企業側であれそれを受けるエージェンシー・メディア企業であれ、「目の前の地球の海の向こうを、頑張って超えれば、火星に行き着く」と思っている節がある。これが「タイタニック号&船底の穴」の例から産んでしまった勘違いだろう。「別次元」の何かがすでに広がっているという意味で「地球と火星」と例えたが、「大企業とDNVB/D2Cブランド」も、「タイタニック号&船底」も、同じ組み合わせの例えだ。
ソレル氏は、WPPで築いた世界一の旧メディアバイイングエージェンシーである「GroupM」に代表される「テレビ・メディア・データ」を捨てたと言って良い。自分で30年かけて築いた牙城を捨てて、デジタル(Google・Amazon)に連動するクリエイティブに特化する方向に定義をシフトさせたのだ。
狭義のファーストパーティー・データは「ユーザー側のデータ使用許可を騙す事なく預かっており」「ユーザー側がびっくりする事なく、利用されたデータの結果に利便性を感じられる用途」において「ユーザーと契約企業側だけの秘密取引」として行われるデータである。このパイプの間に「ベンダー」や「エージェンシー」という契約関係は、実は存在しない。
■大企業にとってのファーストパーティー
大企業用の場合のファーストパーティーの定義はズバリ、「カード会員・メンバー会員の支払い管理」のデータ(のみ)と言い切った方が分かりやすい。例えば「楽天Pay」なら楽天が自社で悠々とファーストパーティー・データを管理するので、買収対象にはならないが、例えば「ニトリ・ロイヤルティ・メンバーズカード」の運営をニトリから委託されているようなデータ会社があれば、ニトリのファーストパーティー・データを握る会社になり、投資対象となる。
上記電通が米国で買収した「Markle」には「Loyalty Program」を委託している巨大CPGクライアントが多数存在する。その顧客パイプを「握る」買収で、エージェンシーとしての芋づるの幹を取る買収であった。電通はGDPR発令の数年前から、ユーザー側から「利用許可」の契約付きのデータを買収していた事になる。
Markleが持つ企業データ
https://www.merkleinc.com/what-we-do/customer-loya...
ソレル氏が「AcxiomもEpsilonもいらない」と述べている理由も、このLoyalty Programの委託・受注数が(少)ないから。ソレル氏が「LiveRampならば買収してもいいかも」と文中で称しているのもこの線引である。AcxiomはIPGに身売りした際、このLiveRamp「以外」のAcxiomを「吐き出した」売却だった。残ったLiveRamp創業メンバーがオールドデータからの離脱を図り、社名をLiveRampに戻して現在活躍中である。
IPGが残り物として買ってしまった「Acxiom」も・・・
続きはMAD MANレポートVol.55にて
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