●「ソーシャル・クレジットスコア」という名の見えない「パワーデーター」
●情報銀行を信用するか、アップルか、グーグルかそれとも・・
●「わたし」のデータの救世主のような「サイン・インWITHアップル」
●実経済を支えているシェアリング・エコノミーが抱える赤字
情報銀行を信用するか、アップルか、グーグルかそれとも・・・
図1:総務省が発表した「情報銀行認定指針の見直しに向けた検討状況について」
出所:首相官邸
GDPR以降「個人情報」取得という行為が、企業側は個人の許諾を取らねばならないという「罰則回避」モードからさらに日々進化している。現在では「許諾を取れば管理ができるので、許諾を(たくさん)取ろう」という動きが発生し、さらにそれを消費者(生活者)側の背中を押すように「預けられる機関があれば利便性が高まる」という論調が派生している。これらは企業と消費者(生活者)と国家と、全ての次元で「意識・知識」の向上を目指すにはまだまだ手探りの状態だ。
図1は2019年4月に総務省が発表した「情報銀行」の概念図である。「個人情報保護と利活用」の両方を目的に「情報銀行」の社会実装に向けた取り組みが行われ、情報銀行として認定される企業も登場した。電通は事実上政府とともに旗振り役として「マイデータ・インテリジェンス」を立ち上げ、博報堂DYでは「データ・エクスチェンジ・プラットフォーム設立準備室(DEX)」を立ち上げている。
米国の「GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)+Microsoft」や、政府と二人三脚の中国企業「BAT(Baidu・Alibaba・Tencent)」等の企業が、すでに「利便を感じているサービスの提供+大量の契約データ量」を展開しているのに比べ、日本独自の「情報銀行系」がどこまで「信用され」かつ「利便を感じる」ところまで行き着くのか。これらの日本の後手の動きに、期待をもって活動している団体も少ないことには読者も自然に気づけるだろう。(情報銀行の定義紹介は報道に譲ることとする)
■「ユーザーが利便性を感じ信用を預ける」とはどんな事(時)なのか
「ユーザーにとって便利だろう」と開発された事業は無数に存在し、現在も毎秒のごとく誕生している。すでに便利なサービスを「ほぼ無料」で世界中にばら撒いた「Google検索・Gmail」や「Facebookのソーシャルプラットフォーム」、「Amazonは世界の商品を買うことができ宅配される」等は先行して、決済情報、住所、音声認識から顔認証まで着実に「わたし」のデータを蓄積している(ユーザーは許可を出した覚えがないという不満があるが)。
この流れに伴い、商品を製造販売することで商売が完結していた「メーカー」と言う概念はすでに崩壊しつつある。「メーカー」による旧来の物品バラマキ販売では、人々との「直接の信用パイプ(ストロー)」の構築をAmazonに奪われるだけでなく、他者すら保持してしまうからだ。
トヨタが物販依存であった「自動車製造販売」のカンバンを降ろし、「Mobility as a Service」の事業体を目指しているのはすでにお馴染みだ。最近日本では日本コカ・コーラ社が、ヘアケアブランド「BOTANIST」を通じて顧客パイプを拡大していた「I-NE社」に資本を入れて(合弁会社へ出資)、新飲料の「CHILL OUT(チルアウト)」を展開するのも同じ流れだ。これらはメーカーが新しい「パイプ取り・育成」に向けた舵取りの典型である。メーカー単独による「熱狂パイプ(につながるファン)」の獲得方法として話題に上っている状態だ(この話題だけで1章設けられそうだ)。
しかしこれらのレベルでは「信用スコア」「サービスを享受し個人の情報を預ける」レベルに至るには、非常に狭く限定的にとどまる。まるで沈みゆくタイタニック号の船底の穴に対する対策の例に留まっている。迫り来る異次元の「津波レベル(火星レベル)」に対する対応や解釈を求められる現象が本章の起案していることだ。
■人々は「わたしの」のデータ管理・保護よりも「めんどう」が苦手で避けたい
結論から説明すれば、人々(わたしを含めた生活者)は論理的に個々のデータを預ける企業や団体の「利便性」と「信用」を天秤にかけた審議をサボる傾向がある。「めんどう」を省きたいがゆえに、「えいや!」とショートカットの思考で委ねる先を決めていく。
現実的には、人々はサービス単体ごとに「わたし」のデータの利用範囲や用途を区分したり選択したりするのは、データ管理の権利や義務と比較して「めんどう」だと考えている。「めんどう」の効率化において、ジブンで手間を省くために四捨五入の自己基準を作ってみたり、手間を任せられるコンシエルジュ型サービスを選んでみたりすることすらが、「めんどう」の範囲に入る程だ。「大半の人達(たとえば7割の人達)」は、世界のスタンダードに任せたいという風潮に移行することになる(すでに移行している)。GAFA企業はそんなことはお見通しであり、生活者側も馴れ合いの関係にある。
「ユーザーが利便性を感じ信用を預ける」ようなサービスの「アイデア」は、山ほど登場するのだが(前出のトヨタやコカ・コーラの例は一端)、それらの「新サービス」の入口が生活者にはめんどうなのだ。そのめんどうな「入口・ゲート」で待ち構えているのが、GAFA+M、BAT企業が目指している矛先だ。
日本で起案されている「情報銀行」の入口は、すでにこれらのグローバル企業がより便利なサービス窓口で待ち構えているのが現状であり、その安全基準から立ち向かうべく立ち上がった日本の「情報“銀行”」の名称も「めんどくさがりや」のユーザーには効能が薄い。
その入口のゲートを広げる筆頭が、いわゆる・・・
続きはMAD MANレポートVol.61にて
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