Vol.121 Amazonのクルマ市場への投資開放

MAD MAN Monthly Report Cover (3)-4


<12月号の目次>

◎ Amazonのクルマ市場への投資開放

◎ 米国で50店舗を展開する知られざる日本企業


◎ 【コラム】AIとエネルギーが新しいエコシステムを形成

◎ 【コラム】MAD MANが解説する日本でのニュース



Amazonのクルマ市場への投資開放

Amazonが米国市場で自動車販売に乗り出した。20246月号 Vol. 115で紹介した「ユニファイドコマース」の概念が、具体例として浮上している。やはり総合クルマ産業は、経済の先発で走るシグナルを見せてくれる。

まずはHyundai車の販売が第一弾であり、米国48都市での展開だ。Amazonは自ら販売するのではなく、第三者ディーラーを通じてマーケットプレイスを提供する仕組みを採用している。この動きは、リテールメディアの新たな形態として注目される。

 

■リテールメディアとユニファイドコマースの先行事例

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Amazonでクルマがポチれる。まずは米国48都市で
2024年12月16日 GIZMODOジャパン
出所:https://www.gizmodo.jp/2024/12/amazon-autos-car-dealer.html

<以下抜粋>
Amazonが米国で自動車販売を始めました。Amazonのサイト上でクルマを見て購入手続きをして、ローンを組んだり、古いクルマを下取りに出したりもできるようになっています。さしあたり展開地域は米国48都市、メーカーはHyundai(ヒョンデ)限定ですが、Amazonは今後もっと拡大したいとしています。
(中略)
今持っている車の下取り価格も「独立のサードパーティ」により査定され、新車代金と相殺されます。普通のディーラーで車を買うときのように、ローンを組むこともできます。
(中略)
Amazonはこのパートナーシップのおかげで、自前の自動車倉庫や配送網を構築せずに自動車市場に参入できました。ただAmazon Autosのヘルプページによれば、このサービスの最終販売者はAmazonでなくディーラーであり、Amazonはマーケットプレイスという位置づけのようです。
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単に「Amazonがクルマを売り始めたぞ」と考える前に、2024年6月号 Vol. 115で提示した「小売事業においてAmazonにはあるが、日本の小売事業(スーパー・百貨店・コンビニ含む)にはまだないモノ(仕組み)は何か」のクイズが本章の起点になる。その根幹は、リテール業態の「セラー市場への投資開放」へのシフトだ。

 

図1:Amazonが開設したクルマのマーケットプレイス
上段)第一号となるHyundaiの発表サイト
下段)実際のAmazon販売ページ(Google翻訳による和訳)

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出所)上段:Amazon.com(2024年12月10日)
下段:Amazon.com/autos

 

■セラー市場がリテールメディアを成長させる

マーケティングや広告で注目を集める「リテールメディア」は、店頭のデジタル・ディスプレイや自社オンラインサイトのバナーなど、単なるメディア枠にとどまらない広範な概念として位置付けられている。

この変革のカギは「セラー市場の拡大」に向けた取り組みにある。具体的には、「フルフィルメント施設の拡充」や、セラーとバイヤーを結びつける「マーケットプレイステクノロジーへの先行投資」が土台となっている。リテールメディア事業は、その仕組みの表層部分に過ぎず、水面下では多くの基盤構築が進められている。

セラー市場の支援に目を向けると、日本のリテーラー(百貨店・スーパー・コンビニ・量販店など)は、セラー市場を広げるためのマーケットプレイス投資が不十分なまま、クローズドなビジネスモデルに依存しているのが現状だ。

たしかに、従来の方法である自社の目利きによる仕入品販売や、高品質な在庫の保有を通じて利益率を向上させる商流は、一定の成功を収めてきた。しかし、近年ではオンライン販売に適していないとされていた商材やサービスですら、マーケットプレイスを通じた販売が可能となり、その販売範囲が拡大している。こうした変化は、日本のリテール業界にとって重要な気付きといえる。

 

2:リテールメディアの隠れたカギ「ノンエンデミック」領域の拡大

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出所)IAB Retail Media Buyer’s Guide

 

リテールメディアは、「エンデミック(既存の店内や自社Webサイトなど“現場”を指す)」にとどまらず、「ノンエンデミック(それ以外の領域)」へと拡大しつつある。この広がりこそが、リテールメディアの成長を支えるカギである(図2・図3参照)

 

図3:エンデミックとその周辺、ノンエンデミックの区分

画像3_v2

出所)IAB Retail Media Buyer’s Guide

 

■ノンエンデミック領域の可能性

冒頭の記事と図1に示された内容は、日本市場にとっていくつかの新たな視点を提供している。

①   Hyundai車の販売における市場開放
Hyundaiというクルマ(巨大な耐久消費財)が、Amazonによってマーケットプレイスを活用し、市場に投入された点が挙げられる。販売主体はHyundaiのディーラー企業であり、Amazonは取引の場を提供するマーケットプレイスとして機能している。

②    オンラインとAI審査を活用した垂直統合
クルマの下取り査定、融資(金融)、保険(ダイナミック・プライシング)を統合した実験が開始された点も挙げられる(図1赤枠参照)。これによりAmazonは販売プラットフォームにとどまらず、関連サービスを一括で提供するエコシステムを構築しつつある。

③    国境を越えるサービス拡大の可能性
現在は米国内48都市を対象にしたサービス展開だが、Hyundaiの納車ネットワークがある地域を中心に、同様のサービスをグローバルに広げる可能性も視野に入れている。たとえば、Amazonのマーケットプレイスを活用することで、新車のサブスクモデル(保険付き・納車入れ替えサービス付き)といった新しいビジネスモデルの実現も考えられる。

④    他メーカーや関連業界への波及効果
Hyundaiにとどまらず、他の自動車メーカーの車種、保険、修理、メンテナンスといったサービスも、オンラインマーケットプレイスに組み込まれる可能性がある。また、この仕組みはWalmartのようにガソリンスタンドや充電ステーションを持つ企業、コンビニにも垂直統合され、さらに広がりを見せる可能性がある・・・

 


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