<6月号の目次>
◎「紙芝居」のNetflix事業がついにじわりと「飴玉」構築に動き出した
◎ コラム:ウェビナーの後でアンケートは取るな(平均の罠)
◎ 意外に忘れているあの有名な会社の親会社
◎ マーケティング投資が「セントラル・フルフィルメント・センター(CFC)」投資と合わさる時
マーケティング投資が「セントラル・フルフィルメント・センター(CFC)」投資と合わさる時
図1 CFCの「広さ」を感覚的に理解してもらう「基準」として、
東京ドームの「フィールド部分(左図の緑のプレーグラウンド=右図の白い部分)」を「サンプル」として掲示した(13,000㎡)
出所:(左)http://www.oku.co.jp/(右)https://www.tokyo-dome.co.jp/
冒頭の図1は、本章タイトルにある「セントラル・フルフィルメント・センター(CFC)」を把握するために、「東京ドーム」の写真と図面で「東京ドーム何個分」か「広さ(㎡)の感覚値」を判断できるモノサシとして掲載した。
■米小売業界第2位の「Kroger」がCFCの稼働を発表
本章は、米国食品スーパーマーケットの最大手の一つである「Kroger」が3年前から英国「Ocado社」製システムを採用して投資していたCFCが完成し、稼働しはじめたことを土台にする。
図2 Krogerが導入した「Ocado」のフルフィルメントセンターを走るカートロボット
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2021年4月16日 TechCrunch Japan
米スーパーKrogerが初の大規模ロボット化フルフィルメントセンターをオハイオに開設
出所:https://jp.techcrunch.com/2021/04/16/2021-04-14-kr...
<以下抜粋(※下線は筆者による)>
ほぼ3年前、提携の契約を交わした米国のスーパーチェーンKroger(クローガー)と英国のオンライン食料雑貨販売店Ocado(オカド)は米国時間4月15日、この契約による最初の主力製品を公開した。Krogerは、Ocadoの技術を使った顧客向けフルフィルメントセンターを、オハイオ州シンシナティの郊外、モンローに開設した。約3万5000平方メートルにおよぶその巨大な倉庫では、Krogerのオンライン店舗で受けた注文に応じて、何千種類もの商品を梱包して消費者に配達する。
(中略)床には巨大なグリッドが描かれ、その上で1000台ほどのロボットと400人の従業員が、商品の棚出し、分類、移動を行うことになる。年間、実店舗20件に相当する7億ドル(約760億円)の売り上げにつながる処理が見込まれている。
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この米国での発表の「背後にある大きな波」をお伝えするために、日本のMAD MANレポート読者にお馴染みの「東京ドーム」を使った。本章は単なる広さを伝えるのが目的ではなく、広さをメタファーにした「ショック」が読者に伝われば、日本における2年後の未来に役立つと考える。
図3:KrogerのCFC内部の様子
■マーケティング投資と顧客へ「お届けする」システム投資は表裏一体になる
日本のCPG企業とその「物販(とサービス)の流通事業」の判断において、メッセージや会話をお届けするマーケティング(&広告)の領域は、その結果や効率性を計測したり、KPI化する基本動作がある。
一方で、これまでのマーケティング領域では見えていない変数も多く、むしろその影響度の方が大きい。たとえば「顧客とのパイプ(物流を含むサービスの流れ)」に関する変数は、事業への影響が大きいにも関わらずマーケティングの「外」として扱われていた。
在庫の補充管理や出荷スケジュールの高速化、店舗の棚取りの最適化などのプロセス(変数)が、顧客の満足を大きく上下させ、販売貢献やブランド価値の構築にまで大きな影響を与えるファクターになった。「当日配送」や「1時間以内」など顧客の「不便を解消する」基準は引き上がる一方だ。
いまさら説明するまでもなく、これらはCPGやサービスを届ける事業としての重要なポイントだ。筆者が「ディストリビューション」や「サブちゃん」「パイプ」という単語を繰り返すのも、これが理由だ。
華やかで分かりやすいマーケティングプロセスの結果に比べると、在庫補充やトラックの配送効率、在庫の棚や家賃支払などの工程は「泥くさく見えにくい白鳥のバタ足」のプロセスである。
ところが、ECサイトやフルフィルメント・センターの急激な発達により、この氷山の水面下にあった「泥くさい」プロセスが、デジタル上での管理が可能になり、資産として浮き上がって来た。水面下にあった「可視化されていなかった巨大なデータ」の存在。これが氷山の水面上に薄っすら乗っていたマーケティングの「顧客データ」よりも、根幹でリアルの価値を生む自社資産(ファーストパーティ・データ)としての価値に浮上してきたのだ。
「氷山の水面下」と例えたデジタル変数について、投資規模が水面上のマーケティングよりも大き過すぎてマーケターが「へぇ、凄いね〜」と自分たちとは違う範囲だと終わらせてしまっては沈没を待つだけになる。むしろ、水面上と水面下のデータの融合を図るマーケターになることを願う。
■「東京ドームの広さ」をメタファーとして気付きに変える
「広さ(㎡)の感覚値※」として東京ドームを使ってCFCを考えてみる。東京ドームの「フィールド面積(野球がプレーされるグランド全体)」は、約13,000㎡だ。
(※本章では「㎡」を採用して紹介する。日本式の「坪」や米国式の「スクエアフィート(sqf)」は「㎡」に換算して統一する。)
ちなみに、KrogerもOcadoもこのCFCを「セントラル」と呼ばずに「カスタマー・フルフィルメント・センター」という呼称にしている(納得!)が、本章では「CFC」と統一の表記で解説する。
■KrogerのCFCとAmazonのフルフィルメント施設の比較
Krogerは20拠点のCFCの設置を計画しているが、直近稼働した2拠点のサイズは以下の通りだ。
<東京ドームのグランド個数による比較>
- Monroe, Ohio, 34,800㎡ 2.7個(※50億円規模の投資と報道)
- Cleveland, Dallas 32,800㎡ 2.5個
比較対象としては、下記を参考にされたい。
- イオングループがKrogerと同様のOcadoを採用し、2020年8月に着工を発表、2023年に稼働するCFC予定地(図4参照)
千葉市緑区 延床面積 43,070㎡ 3.3個 - 米国AmazonにおけるCFCのおよその基準サイズ
55,700㎡〜93,000㎡ 4.3〜7.1個 - Amazonジャパンが埼玉県上尾市に2020年10月に開設したCFC
91,245㎡ 7個! - Amazonジャパンが2020年に新設した稼働中のCFC4拠点の合計床面積
約272,000㎡ 21個!(※4拠点で割れば1拠点5.2個)
筆者はイオングループこそが和製で先見の明があると期待していたところ、すでにAmazonジャパンはそれを数十倍で上回るペースで日本市場に入り込んでいる・・・
続きはMAD MANレポートVol.79にて
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