<2月号の目次>
◎ Eメールの激減によるGoogleへの経済インパクト
◎ Amazon新CEOの名前は覚えたか
◎ YouTube・Amazon・Facebook・電通Gの広告収入から事業規模を比較
◎ 余談コラム:Cookieがダメとされる理由は「個人に紐づく」からではない
◎ 巨大な広告タイタニック号「Google・Facebook」からの脱出
(前編)ポストCookie論のバイアスとは
(後編)ポストCookie論が抱える3つのマイナスリスク
巨大な広告タイタニック号「Google・Facebook」からの脱出
(後編)ポストCookie論が抱える3つのマイナスリスク
■「ポストCookie」の情報を撒いている役者は誰か
現在、日本語メディアにおいて個人情報にまつわる情報が「ポストCookie」の関連記事等に集中して登場している。その情報の語り手の立場に注意しておきたい。
「ポストCookie」の情報に関する大半の語り手は、主に広告予算の受注を維持したい(伸ばしたい)以下のマーケティングサービスを提供する企業である。
• 大手広告代理店(グローバルホールディングス)
• アドテク企業(上場企業、大手に買収されたユニットを含む)
• プラットフォーマー(GAFAM等)
• パブリッシャー 等
これらの広告を売る側の「ポストCookie」の対応策が、彼らの広告受注を前提とした我田引水の情報として発信されている。(例:まだまだ工夫をすれば、他人の家に誰にも知られずに侵入してご飯が食べられますよ。)
故に彼らがその答えを欲する側へ提供する話題は、現在のビジネスへの技術的な対処策やイロハが中心となっている。この救急絆創膏(代替策)を貼れば大きな支障は無いのでご安心くださいという論理が多い。これにはぜひ自社へご相談くださいという意図が含まれている。
これらの代替策は技術的に学ぶことはあれど、経営そのものの課題を先送りする姿勢であり、旧態依然の方法を延長線上で推進するという行動であることは明らかだ。
しかし、ブランド側やパブリッシャー側は我田引水と知りつつも拒絶するまでの一歩踏み出す勇気はまだ持てていない。それどころか、今のうちに稼げるだけ共に稼いでおきたいという姿勢が見え隠れする。「まだしばらく大丈夫」なので、「いずれ考える」ということのようだ。
■GoogleやFacebookは今や防戦のPRばかり
たとえばGoogleの立場からの発表は、「Privacy Sandbox (Ads Data Hub)」「FLoCの概念」「TURTLEDOVEやFLEDGEのプロポーザル(案)」※等の英語圏の専門情報が溢れており、消費者・市民が理解しようにも煙に巻かれたような情報ばかりである。
(※技術的な専門用語を上記に並べたが、本章での技術的な紹介は巷の報道に詳細がたくさん掲載されているため、省略させていただく。)
GoogleはFLoCテクノロジーのテスト結果として、不安に感じている広告主への信用を落ち着かせるための意図を持った検証結果を発表した(以下のブログ記事を参照)。こちらはツッコミどころが満載だが、段階的なテストにおける2021年2月時点の結果としている。
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2021年2月1日 Google Japan Blog
プライバシーを優先したオンライン広告の未来にむけて
出所:https://japan.googleblog.com/2021/02/2021-privacy-...
<以下抜粋>
本検証によるマーケットおよび Google 上のアフィニティ オーディエンスへのリーチテストによれば、広告主において「 Cookie ベース広告と比べて投資 1 ドルあたりのコンバージョン率 95% 以上」が見込めることが分かりました。
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Googleのプライバシーサンドボックスの計画では、「チームGoogle」を編成すべく複数のアドテク企業が参画している。しかし一部の参画企業(例:Criteo)で、Google案に対してChromeブラウザへの偏重を指摘するといった仲間割れも発生している。
これらのGoogle(やFacebook)からの新しい技術の紹介は、筆者から見るとプラットフォーマー側のアカウンタビリティ(説明責任)の名の下の陽動作戦であり、既存の概念の延長線上にある出方である。難しくはないけれども新しい技術用語を登場させては説明を繰り返している背景には、下記のような姿勢が伺える。
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Google・Facebookによる各広告主に対してのささやき(筆者の空想):
「これまでのデジタル上のマーケティングでの商習慣を思い起こしなさい。今、目の前のサイト訪問数の激減や、あるいは訪問人数が認識不能となって、御社の事業は大丈夫ですか。サイトを訪問する方々への『フリークエンシー過多を防ぐキャップ』は無くなって失礼になりませんか。予算を投下したキャンペーンの効果測定が説明不可能となり、ターゲット層に向けた適切なメッセージが配信できず、さらに開発したアプリのインストールしたユーザーにお礼もフォローも一切できない(アトリビューション不能)のですよ。これまでの多くのマーケティング活動の関連業務が全面的に支障を来すことになりそうですが、それで良いのですか。ご安心なさい、ほぼ同等のツールをGoogleは(Facebookは)用意しました。」
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当たらずとも遠からずだ。
これらの「ご飯が食べれられなくなる」という情報は、マーケティング予算を持つブランド企業からの人気を集められる記事として、媒体社(パブリッシャー)と足並みを揃えて投稿され、発信されている。(後編でFacebookによるThe Wall Street Journalや The New York Timesへの全面広告やGoogleとニューズ・コーポレーションの契約の事例を紹介する。)
さらにアドテク企業にインタビューをおこなってみたり、アドテク企業側も積極的に自社事業のPRのために技術的な対応マニュアルを公開したりすることで一連の記事コンテンツ群が生まれている。
■データクリーンルームという「商品」
Google側に近いアドテクベンダーも同じように「ポストCookie」に対する包囲網を備えている。アドテクベンダー達は「データクリーンルーム」というカテゴリーを新たに創出した。米国のベンダーの場合は、Googleと他のプラットフォーマーとの相互接続によるターゲティング広告とその検証機能を、これまでと同様と見せるべく、自社商品をアピールしている状態だ。
図1:「DIGIDAY」は2019年3月にデータクリーンルームの概念を紹介
たとえば、DSP出身のアドテク・エージェンシーであるThe Trade Deskならば、自社のデータクリーンルームとしてUnified ID 2.0を売り込み、同じアドテクのSSPに近いLive Rampならば、Safe Havenをパブリッシャー側へ売り込む。それどころか、これらのベンダー同士が相互接続してスケール化を狙うお馴染みの動きも・・・
続きはMAD MANレポートVol.75にて
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