◎ 新サブスク映像コンテンツ「家トレ」
「Peloton」と「Mirror」が見せる、「軽いデータ」の儲け方
◎ 外出規制の特需「フード宅配」、次の一手を考える
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②ドイツから日本市場進出した「foodpanda」の事業目的とは
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新サブスク映像コンテンツ「家トレ」
「Peloton」と「Mirror」が見せる、「軽いデータ」の儲け方
米国のスタートアップ企業「Peloton」や「Mirror」の名前はすでに日本市場でも聞くことがあるだろう。オンラインでインストラクターのフィットネスを受講できるサブスクリプションサービスを提供している。外出自粛によって成長した代表的なサービス「Zoom」や「Teams」と同様、リモート環境下によって生まれた「新産業」とも言える。スポーツジムに行かず、自宅でフィットネスを行うトレンドが生まれ、会員数を伸ばしている。タブレット上でのモニターの映像と音声を介在するだけに、新たな映像コンテンツとしても注目される。
筆者の結論として、これらの流行りのサービスは、会員数の伸び率を見るだけでなく、その先の収益がどうなるのかを理解することが重要としている。「今だけのトレンド」と読者にも見えている事だろうし、必ず「2.0時代」が来ることが読める。「利益が出ているのか」または、今は黒字でなくとも今後「どのようにして利益を生もうとしているのか」という長期目線は必ず必要だ。現在の目の前の会員数増加に比例して、サービスを取り上げるメディア記事が増える中で、トレンドに遅れまいとこれらの事業が成長企業と思い込む必要は無い。とはいえ、現象として顕著な成長を遂げているのでどの要素が特異なのかを紹介する。
■コネクテッド・フィットネス「Peloton」と「Mirror」は暗記事項
図1:自宅をフィットネスジムに変えるPeloton
「Peloton」と「Mirror」は、自宅の3番目、4番目のモニターを購入させるビジネスだ。スマホやTVモニターをすでに自宅に所持しているにもかかわらず、さらに20万円前後する「1メートル程度の立て掛けタイプの鏡」や「たった23インチ」のモニター付きの自転車を購入した上で、その新たな画面の中に登場するインストラクターを、自分の目標やパートナーとして「生きがいの一部」として思い込ませるビジネスとも言える。
図2:自宅をフィットネスジムに変えるMIRROR
Pelotonは2019年9月にNasdaq上場(当時の時価総額で約7,200億円、72億ドル)、そしてMirrorは2020年6月に日本にもギンザ・シックスに店舗を構えるLululemonが買収(約500億円、5億ドル)し、それぞれが持つ企業の未来の価値が話題になっている。
ちなみに上場企業のPelotonの株価は2020年3月に一旦落ち込んだ株価が20ドルだったのが、2020年10月には130ドルを越えて、2020年11月19日現在105ドルで、時価総額は何と、約3.1兆円(307億ドル)である。
図3:上場企業のPelotonの株価
■リアルのスポーツジムの苦難を横目に
外出自粛によって、リアル店舗型の老舗フィットネスジム「Gold Gym」(GGI Holdings)が2020年5月に破産法を申請したのを始め、フィットネスジムのサブスク運営は苦しい。日本でも2019年頃に暗闇でのフィットネスがおなじみのFEELCYCLE等がニューヨークで多く開業したが、2020年以降の利用者の増加は望めまい。
ニューヨークのリアル店舗のフィットネスジムは、外出規制が緩まっても入店には定員の25%までという制限があり、夕刻になるとジムの外で長蛇の列ができている(図4)。「外で待っている時間があるくらいなら、ジョギングをするなり代替方法がありそう」と筆者は思うのだが、並んでいる会員からすれば最初に並んで入店すれば、人気のマシンが独占して使えて、しかも消毒済みの器具が使えるのが並ぶ理由らしい。
図4:スポーツジム大手の「Blink」前に、入場規制で左の奥まで人の列が並ぶ様子
出所:筆者撮影
これは米国での「ジムの会員に残った組」側の少数意見であり、すでに節約モードに切り替え、解約した会員を含む全体を反映する声ではない。会員を増やせずに減るばかりのサブスク経営は非常に厳しい。参考までに、筆者もフィットネスの「Equinox」の会員であった経験もあり、ニューヨークマラソンも挑戦したことがあるため、利用者側の気持ちが分かる立場での見解だ。
以下、垂直型のオンラインサブスクで登場したPelotonとMirrorの課金モデルを簡略に・・・
続きはMAD MANレポートVol.72にて
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