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スマートシティの未来か:新マンハッタンの巨大都市開発「ハドソン・ヤード」の大実験
出所:Hudson Yardsオフィシャルサイト
(https://www.hudsonyardsnewyork.com)
約90年ぶりのニューヨーク市における超巨大都市開発が「Hudson Yards」としてついにマンハッタン西の端に開業した(部分開業)。今年のニューヨーク観光名所の筆頭は間違いない。
地域一帯の総事業費が2兆7,500億円(250億ドル)と言われ、エリアにはホテル、億ション、アメニティー施設、それに世界に名だたる企業本社が集結する。東京で例えれば、六本木ヒルズ、汐留シオサイトの高層ビル群、虎ノ門ヒルズを合併させて、その中に銀座以上の世界ブランド品店鋪が全て並ぶ状態。ニューヨークにおける民間による過去最大規模の再開発地区だ。
図1:「Vessel」の外観
出所:筆者撮影
この開発地域の目玉アトラクションでありシンボル建造物となる表紙写真のVessel(器の意味)は、700人を収容できる無料の公園であるのにも関わらず、入場制限がかかって400人待ち(単なる散歩道の入り口に、400人が列をなす)の大盛況で最初の週末を迎えた。
Vesselの階段は、総段数2,500。その都度にある80箇所の踊り場が展望台となっており、高さにして15階建て。登りきるとかなりの運動量になる。詳細は観光報道にゆずる。
図2:マンハッタン上空から見た「Hudson Yard」
出所:「Hudson Yard」オフィシャルサイト
図3:観光名所となる「Vessel」
出所:ウォール・ストリート・ジャーナル
(https://www.wsj.com)
■「フードホール(Food Hall)」の新しいカタチ
「Hudson Yards」の複合事業の開業は、実際はその区画の一部の7フロアで構成される巨大ショッピングモール「The Shops at Hudson Yards」の開業の事を略して「Hudson Yards」と呼ばれている。同じモール形態である東京の「GINZA-SIX」の地下2〜13階(15フロア)の総床面積と比較するとおよそ倍の広さ(93,000㎡)だ。Hudson Yardsの方がフロア数が半分なので単純計算で1フロアがGINZA-SIXの4倍の敷地になり「GINZA4,5,6丁目」のモールが登場したような状況だ。
このHudson Yardsの販売店鋪フロアは、かなり気合の入ったリアル店舗の新しい実験として特筆される。 「Food Hall」と位置づける空間の合間に、有名ブティックが「混合入居」しているのだ。これまではありえなかった「レストラン街」と「ブティック街」を混在(融合)させた形を「食べ物街(Food Hall)」と呼ぶ仕上げだ。
図4:Hudson Yardsの内観
出所:筆者撮影
まるでシェアリング・エコノミーから発想を得たような、「お互いの間借り合い」をプレミアムのブランド達に強制実現させたような印象である。
通常ショッピングモールや百貨店での建築・フロア構造は、昼と夜に賑わう人気レストランを集めたFood Hall(レストラン街)を最上階に位置させる。そこを目がけて来店する顧客の「シャワー効果」によって、リテール店街にも交通量をもたらすという仕組みが常套手段である。
この常套手段に対してHudson YardsのFood Hallの「混合」の試みは、例えばアパレル「ZARA」の向かいに「Momofuku」の唐揚げ屋があり、センシティブなフレーバーを扱う。「Kiehl’s」の隣の高級アイスクリーム屋「Van Leeuwen」からはバニラの香りが漂い、その向かいに「UNIQLO」がある、という具合だ。ファッションリテーラーは、食べ物の汚れや匂いを嫌う事が常識であったのに、Hudson Yardsは混合を条件とした。おかげで、選り取りのレストランを現地で選んで入店しようとする人は、巨大なホール中を歩いて探すことになる。
図5:Kiehl’sのテナントの外観
出所:筆者撮影
図6:ユニクロのテナントの外観
出所:筆者撮影
■フードホールがモール全体を牽引できない傾向
この「常識破り」のミックス実験が行われているのは、米国では・・・
続きはMAD MANレポートVol.52にて
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