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誰も踏み込まない、ニールセンのTV視聴率の牙城。広告主は自己防衛の視聴動向データへの投資へ
■ニールセンに唯一物申せるWPPマーティン・ソレルCEO
日本のビデオリサーチの視聴率と同様、アメリカの視聴率に関しても、ニールセンの独占状態の指標を疑問視したり、改善要求をしたりする声はほとんど聞くことがない。ニールセンの日記式の視聴調査のサンプル数が少なすぎるばかりに、小さな地方局がたまに自局の数字を「ゼロ」と表示され、不満を述べる事はある。しかし利害の一致する大手キー局から否定的なコメントはなかなか出ないものだ(=数値の過大計測の可能性が疑われる)。過去には、新聞社や雑誌社が指摘することがあったが、近年は「ビデオ」「モバイル」媒体を同時にパブリッシャーは抱えているので、ニールセンの発行する「トータルオーディエンス」レポートに対し、モノ言わぬメディアになってしまった。
図1:WPPマーティン・ソレルCEO
出典Adage
そんな中、ポジショントークと割り引いても、WPPマーティン・ソレルCEOの発する視聴率に対するコメントはメディア視聴率の「捉え方」を示唆している。先月今月と、株主向けカンファレンスと業界セミナーで立て続けに「ニールセン叩き」がアドエイジに登場した。
■広告主はエージェンシーのセリフにまどわされない事
結論としては、広告主側の立場ではソレルCEOの提言は的を得ているが氏のコメントすらも鵜呑みにできない。ニールセンの視聴率(視聴者数)のオーディエンス指標に加え、広告主は独自の指標を持ち、クロスさせる事で数値満足度を引き上げるしかない。独自指標への投資は広告主側の責任範囲であって、この部分をエージェンシー(WPPを含む)側に任せると、同じ穴のムジナになる可能性がある。
それでもグローバルで指標統一する必要性のあるグローバル企業は、やはりWPP等のグローバルリーチのあるバイイング会社(グループM等)に指標を任せざるを得ないという、選択肢なきジレンマが存在する。「グローバルでの統一代替案」がソレルCEOのグローバル企業に対する「ウリ文句」と考えれば良いだろう。
“The traditional model with Nielsen is not efficient, effective or accurate in measuring traditional media,”
「ニールセンのトラディショナルモデルは、今や効率的でも正確でもない計測方法だ」と言い切っている。ある意味気持ちが良い。(WSJ 2015/8/26, adage 2015/9/15)
WPPはニールセン・データの代替手段(補助手段)として、別の視聴率計測会社であるレントラック(ケーブルセットトップボックスから視聴率を引き出す)へ15%出資、そしてオンライン視聴計測のコムスコアに20%の出資をしている。これにWPPは傘下の調査会社カンターの消費者データと掛けあわせる事で、グローバルサービスを提供し、ニールセンへの一本足状態を防いでいる。上記は日本ではおよそ「使えない組み合わせ」で想像しにくいかもだが、グローバルサービスとして成立している。グローバルに目線を置いた場合は、日本の「局地的な」事は後で調整すれば済む事で、まずはどれほど欧米主要マーケットがカバーされているのかが採用の決め手となる。
WPPはこれらのデータに加え、Xaxis(WPPのデジタルバイイング部門)とAppNexus(アドテクプラットフォーム、WPPが15%シェア)と豊富な資金力で「(買い切り)プライベート・マーケット・プレイス」を提供する。これでIBM、コカコーラ、ユニリーバ級のグローバルクライアントは「他にチョイスがないので使う」という状態の出来上がりだ。
■グローバルマーケターとは次元を変えて、メディアデータの投資先を考える
我々が日本のマーケター(広告主)の参考にしたいのは、シード時期から立ち上がったテクノロジー企業に対する、WPPらの投資の動きだ。シード段階では見えずとも、ラウンドB-Cあたりから、メディアエージェンシーはテレビ視聴率を補完したり・・・
続きはMAD MANレポートVol.10にて
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