●アップル・ウォッチではなくアップル・ペイを考察せよ~マーケティングからファイナンスへのテクノロジー逆流~
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アップル・ウォッチではなくアップル・ペイを考察せよ
アップルの次のイノベーションは、ウエアラブル・デバイスの「アップル・ウォッチ」ではなく、決済システムの「アップル・ペイ」にある。
アップルが超巨大な「世界の決済市場」に参入してきた事を、グローバルの波として意識して理解してもらうレポートだ。読者は気づいているだろうか、またしても日本は巨大決済システムにおいて、既に 「ガラパゴス状態」であり、世界の「蚊帳の外」になろうとしている事を。世界の標準は日本を飛ばして中国に先に入ってくる可能性もある。東京オリンピックに向けて景気やシステムがいずれ上向くと思っている妄想は、世界の主導権からみれば「めくらまし」の道具の一つだ。マーケティング業界としては、少しでも外の空気を読んでおく方が良い。
図1:アップル・ペイの店頭の様子
「アクセプタンスマーク」であるカード会社のロゴとアップル・ペイのロゴが並列なのはちょいと技術的に意味が違うのだが
(アップル・ペイのシステムの基本はカード会社のシステムの上に乗っかっているだけなので)普及の1片が伺えるだろう。
一度アップル・ペイを知って使ってしまうと、二度と昔には戻れない程の使い勝手だ。
オーガニック食品スーパーのホールフーズ・マーケット店頭にて。
ここでのアップル・ペイの利用はびっくりされる事なく、あたりまえになった。
■アップルは「発明」をしている訳ではない
アップル信者に解説をフォロー願いたいが、アップルはこれまでのiPod→iPhone→iPadの一連のイノベーションの流れにおいて、特に「新発明」を世に出した訳ではない。「既存アイデア」を「本当に正しいタイミングまで待って=満を持して」一気に、そしてユーザー体験(User Interface、User Experience=UX)をクールに、かつ完全な状態に仕上げていったのがアップルだった。言い換えるとアップルは「埋もれていた技術を、需要が高いタイミングで、アップル・ファンを武器にロンチさせる企業」、あるいは「異業種の困ったシステムに、ユーザー・エクスペリエンス技能(顧客にフォーカスした、顧客行動を考えぬき、プロセスを見破る技能=UX)を持ち込み、参入する企業」なのではないか。 http://ascii.jp/elem/000/000/929/929595/
例えば「iPhone」の領域では、ブラックベリー、Palm、日本のガラケーを含めて、技術的に先行する製品やシステムは存在していた。「iPad」のタブレットの概念も、スティーブ・ジョブズが2010年に発表するかなり以前から存在をしていた。mp3プレーヤーも「12曲入れられる」製品の時代があり、その後に満を持して 「1000曲があなたのポケットに!」としてiPodのデザインをiTunesの機能と共に登場させた。そして今回の「アップル・ペイ」の概念の登場だ。先発の「おサイフ・ケータイ」に馴染みのある日本の読者には新しさが感じられないかもしれず、さらにアップル・ペイは未だ日本市場に導入されてない事で「疎く」なりがちである分、今回MAD MANレポートとして改めてお伝えしたい。
■アップルは業界にまん延する課題をプラットフォームの提供で一気に解決させる
レコード時代の古い契約形態や流通形態に行き詰まる音楽業界をアップルがiTunes(とiPodで)で変えたように、NFC/非接触決済サービスを軸にしてアップル・ペイ(とアップル・ウォッチとiPhoneとiOS)によって、アップルが決済エコシステム=「決済産業」を変えていく。決済市場は1日約120億ドル(約1.4兆円、年間換算では約4兆ドル、約480兆円市場だ!)のトランザクション量が「米国だけで」存在する巨大産業だ。
2014年のアップル・ペイの発表の際、ティム・クックCEOは大スクリーンに映るクレジットカードの山を背景にこう宣言している。
“This whole process is based on this little piece of plastic.We’re totally reliant on the exposed numbers and the outdated and vulnerable magnetic stripe interface, which is five decades old.“
(この小さなプラスチックの板と、簡単に盗まれる磁気方式の帯によるシステムに私達は巨額の金額取引を任せていいた。ちなみに、このプラスチックと磁気方式の技術は50年前の技術だ。)
■経済指標としても捉えられる、アップルの確固たる動き
アップルが動くと、アップル・ファンを起爆剤に、その周辺の競合と追随軍がつられて動く・・・
続きはMAD MANレポートVol.8にて
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