あ、なんか年末ブログなのに、偉そうな提言みたいなタイトルになっちゃいましたw
でも、これ本当に思っていることだし、実践していきたいし、デジタル人材がブランドもマーケティングも扱えるようになると、結果とてもハッピーなことなので、書いてみようと思います。
(念の為、僕も、絶賛、学び中ですからねw)。
今年の最終営業時間は、全員Zoomに集合して「ブランド論」を読み合わせする、という締め方をしました。なんか、最後の時間までBICPっぽくていい感じでしたw きっかけは、宣伝会議さんが出版している「手書きの戦略論」。これのオンライン講座の末席に加えていただいたことで、僕自身がもう一度この本に目を通したことでした。
この本の良いところは、「ポジショニング論」「ブランド論」「アカウントプランニング論」「IMC論」ほか、7つのマーケティングに関わる各論の起こりから現在に至るまで、誰が、何を提唱して上書きされてきたのか、を簡単におさらいできることです。
ブランド論でいえば、
ブランドイメージ論→ブランドエクイティ論→ブランドアイデンティティ論→ブランドエクスペリエンス論
という流れ。その間に、デイヴィッド・オグルヴィ、デイヴィッド・アーカー、ケビン・ケラー、バーンド・シュミットなどが登場し、それぞれの出典を明らかにして、時代背景や思考の積み重ねをトレースできる格好。
実務経験を積んできた方からすると、改めて経験を体系的に腹落ちさせることができて面白いはずです。一方で、僕は、デジタルの施策領域からキャリアをスタートさせている、若い方に読んでいただきたいなあと思っています。自分がどれだけ可能性のある面白いキャリアの入り口に立っているのか、を認識できる本なのではないかなあと。リスティングのTD考えるなら、ポジショニング論をわかっていた方がいいし、カスタマージャーニー描くならIMC論を知っていた方がいい。インサイトという言葉もアカウントプランニング論を理解していればもう少し丁寧に扱えるかもしれない。そもそも、デジタル施策はお客様と直接つながる訳なので、ダイレクト施策とかブランディング施策とか関係なくて、全てがお客様にとっては、ブランドの真実の瞬間だったりするわけです。
戦略を描きながら施策を実行できるだけで、仕事はとても楽しくなるし、実際ABテストでは出せない成果の振れ幅が出ます。
マーケ業界にいるなら古典ちゃんと読め、と言われても、実務との関連性が想像しにくく、なかなか、手が届きにくかったりするのも片方ではあると思っていて、そういう意味でも、エントリー版としてとてもオススメ。まあ、結局これを入り口に古典は読んでおこう、ということなんですけどw(なんやねん)。
「目的と手段が逆転している」、「これは戦術であって戦略ではない」、よく聞かれる言葉です。ややもすると、手段に携わる人、戦術を実行する人を揶揄する言葉にも聞こえます。ただ、僕は、手段や戦術もとても大事だと思っていて。何故ならば、新しい手段が目的を再考させてくれる機会になったり、新しい戦術が戦略そのものを変えてしまったりすることもあるからです。手段や戦術を知っているからこそ、起こせる変革があるはずです。何よりも、ラストワンマイル、価値を届けるのは手段。
2020年、毎日のように耳にしたDX、D2C、OMO。ここに求められる人材要件ってどんなもんでしょう?
大前提、デジタルの知識や経験をちゃんと持っておくこと。でも、これだけでは足りませんよね。コロナのおかげでDX的プロジェクトがイッキに進みはじめました。ただ、ちょっとのぞいてみると、まだまだ、目的不在、顧客不在、価値未定、な現場がたくさんありそうです。これは、過去にDMPやCDPやMAの屍を大量に生み出した業界現象にすごく似ているなあと思っていて。
DXの全てを、ブランドやマーケティングの思考でどうこう、とは言えないかもしれませんが、少なくとも、自社のらしさ、って、なんなのか?誰の、どのような問題を解決したいのか?は、大前提として必要ですよね。むしろ、そこを骨太に描く力がなければ、競争力のあるDXなんて実現しないはずです。そういうスキルも要件として同時に必要なのです。
2000年代の前半には、デジタルネイティブとデジタルイミグラントという議論がありました。生まれながらにしてIT環境に親しんで育ってきたネイティブ世代と、意識的に手に入れなければいけないイミグラント世代。僕は正直イミグラントなんですが、30代前半でたまたまデジタルへの川を渡ることができて、ラッキーでした。片方で、いまは、同様にデジタルネイティブな人材が、戦略領域への川を渡れるか、という場面。デジタル人材が、戦略にイミグレーションするか。
これ、言うは易しで、自ら意識的に環境を作っていかないと難しいと思うのです。実行領域の専門性の高い職場になるほど、戦略論を学ぶ機会がなく、意識の高い一部の人が学ぶ程度。学んだとしても実務で求められる機会が少ないかもしれません。デジタルスキルを買われて転職した後も、専門プレイヤーとしてアサインされて出島化しているケースもあります。まだまだ、デジタル人材に、肝心な戦略の中枢を任せられていないのです。
僕自身も、前職の広告代理店時代はデジタル部門の責任者を務めていた都合、期待されるのは専門領域であって、ブランドづくりやマーケティング戦略を期待されることはほとんどありませんでした(恨みごとではないw)。なので、BICPを創業してからは、デジタルリテラシーはいつでも取り出せる資源として置いておきながら、マーケティング戦略に振り切って会社の経験やメンバーのキャリアを再構築して実績も作ってきました。これくらい意識的に切り替えないと、デジタル人材に対する周辺からの認識は、専門家の領域を出ることが難しかったりもすると思っています。でも、そもそもデジタルを切り分けてそんなこと言ってるの日本だけでナンセンスだと、海外在住の知人からは笑われます。世界ではあたりまえ、日本固有の問題w
デジタル時代の競争は第二幕に突入したと言われています。サイバー空間の競争はだいたいGAFAMに軍配があがりました。で、これからは、フィジカルな空間の競争へ。これが、メーカーやリテールのデジタル化、といわれている領域で、D2CやOMOの話にも繋がります。ここは、日本のモノづくりや、おもてなしの精神がきっと生きるであろう領域。ただ、プロダクトをマーケティングする、サービスをマーケティングをする、ではなく、プロダクトとサービスを組み合わせながら、どうやってお客様と繋がり続けていくかという時代に突入しています。
この、繋がり続けるための要件として、デジタルの活用はマスト。だから、デジタル人材が活躍できる場がもっと増えていくはず。一方で、お客様から支持されるブランドの理念や、繋がり続けるに値するベネフィットの設計がなければ、誰でも真似できる独自性のないただの仕組みになってしまう。デジタルを扱う人材が、バリューチェーンの変革に関わる働き手として、価値を導き、届けることができるか。これは、どのような理念を持って働くか、その理念を実現するためにどのようなスキルや経験を獲得するか、ということにも通じるなあと。
シンプルにいうと、ブランドもマーケティングもデジタルも、全部扱える人材がもっと増えると、DXみたいなものが掛け声で終わらずに、価値のあるものとして自然と溶け込んでいくだろうし、結果、世の中がハッピーになるだろうなと。欧米で成功しているD2Cブランド(BICPではDNVBと呼んでいます)を観察すると、ヒントはたくさんありますよね。デジタル人材が、戦略のど真ん中へ。
僕自身がデジタルの施策経験が長くて、そこからブランド戦略、マーケティング戦略を扱う立場に意識的にシフトしてきたので(まだまだ勉強中だけど!w)、志のある若い人や、変革に苦労しているクライアントを経験値をもってサポートしたいと思ってるのです。BICPってそういうメンバーがたくさん集まってるし。
僕が好きなDNVBのひとつ、EVERLANE。彼らが掲げている「Radical Transparency」は、仕入れ、製造、プロダクト、価格、物流、パートナーシップ、すべてに行き渡っていて、嘘がない。その、真実性が好き。
さて、BICPのお仕事は、少しずつですが、ステップアップしている気がします。2020年は、この数年力を入れてきたマーケティング戦略も、STPよりも手前、ブランドの定義、ミッション・ビジョン・バリューの設計から入るケースが増えてきました。結局、ここからやらないと、ブランドの活動として不整合が起こりやすいし、小手先のSTPだけやっても削りあいになるケースも多く。ブランドの理念を、真実性を持って従業員の皆さんや、各バリューチェーンからのアウトプットに行き渡らせることができるかが、一番の競争力になることも身に染みてわかってきました。
あ、あともう一つ、これはBICP DATA を中心に進めているんですが、ゼロ・パーティ・データの構築。この概念は、プライバシー規制と絡めて語られることが多いですが、ゼロ・パーティの本質は、お客様が主語、ってことなんです。ファースト・パーティ・データは自社=企業が主語。ゼロ・パーティは、お客様の中にある、ブランドに対する認識や期待なのです。そう考えると、ぐっとブランド戦略の自分ごととして捉えやすくなりますよね。両方のリテラシーを持つっていうのはこういうことかなと。詳しくは来年、BICP DATAのブログでみんなが語ってくれると思います。
生活者一人一人が、どう生きるか、を考えはじめた2020年。2021年は、新しい価値観によって選ばれる、ブランドのあり方が問われる一年になると思います。これはブランドを扱うマーケターがどのような理念をもって何を生み出すか、という問いと同じ。マーケティング戦略、デジタル戦略、それぞれのリテラシーを磨きながら、新しい価値を創造し、お客様に届ける、そんな形で僕たちも答えていきたいなあと思っています。
結局放談みたいになりましたがw 2020年最後のブログでした。
今年も大変お世話になりました!皆さま、よいお年をお迎えください。