昨日は令和元年、2019年の最終営業日。おかげさまで健やかに無事納めることができました。
流行語大賞にマーケティング業界部門があるとしたら、今年は「D2C」という言葉が間違いなく上位に来たのではないでしょうか?それくらい業界ニュース、トピックスでこの言葉を目にしない日はありませんでした。
一方で、商売のやり方を表す「D2C」という言葉に対して、「DNVB(Digitally Native Vertical Brand)」というブランドのあり方を表す言葉も注目されたと思います。この二つの言葉は似ているようで定義している範囲が異なります。僕たちがブランドの皆さまとお話をする時は、どちらかというと後者の解釈で議論をすることが多いです。「D2C」が顧客と直接繋がる「販路や売り方」「手段」を指しているのに対して「DNVB」は「目的や理念」で太く顧客と繋がるブランドの「あり様」を定義しているからです。
米国でも広告主協会がDNVBトップ企業に関するレポートを出したり、エージェンシー業界でもDNVBに特化した新しい支援スタイルが台頭するなど注目を集めています。単純な仕組みとして顧客と直接繋がるのだけではなく、サステナビリティに代表されるような社会課題の解決を目的においたブランドと、その理念に共感し消費を通じて支持する顧客の間にある「太い繋がり=パイプ」が注目されています。
※詳しくは、先日発刊された「マーケティングのデジタル化 5つの本質」で解説されていますので、ご興味ある方は、ぜひ!
さて、なぜこんな話をしているかというと、僕たちBICPも事業を拡張する中で、それぞれの領域でクライアント企業の皆さま、パートナー企業の皆さまと、繋がりを感じる場面が多く、そこに幸せに感じるているからです。
昨年から今年にかけて、BICPでは新しい二つの打ち手を実行しました。
打ち手その1:データ戦略チームを分社化し、株式会社ビーアイシーピー・データを設立。(2018年10月)
打ち手その2:関西エリアのクライアント支援強化を目的に、関西オフィスを開設。(2019年9月)
BICPグループはまだ20名足らずの組織なので、データ領域の分社化はまだ尚早なんじゃないか、とか、関西は拠点を出さずに、東京から通いでできるんじゃないか、など迷いが全くなかったかと言えば嘘です。ただ、結論、切り出しちゃってよかったな、というお話です。
よかった理由は主に3つです。
①その領域のビジネスが、垂直に立ち上がる。
クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」の中でも、企業がイノベーションを起こすための3つの方法論について検証されています。「Build:社内で立ち上げる」「Buy:買収する」「Spin-off:別組織化する」。で、多くの場合「Build」って上手くいかないんですよね。理由はシンプルで、PLが回っている既存ビジネスのKPIに引っ張られるから、です。そういう企業、多いんじゃないでしょうか?BICPはようやく第6期を迎えた若くて小さい会社なんですが、本業が思いのほか戦略プランニングの領域で成長し始めた中で、データ固有の問題に向き合う新しいマネタイズのモデルや、東京とはまた違った関西固有のマーケティング支援のあり方を模索するミッションを並行して動かすことの難しさを感じていました(これは僕のマネジメントレベルの低さに由来するところもあるかもですがw)。小さい会社なのに、すでにジレンマが起こりそうな予感だったのです。なので、組織として分けちゃったんですが、当然ながら分けた以上、自立しなければいけないので、必死に立ち上がろうとするんですよね。BICPが5年前そうであったように、データ、関西とも新しい創業がはじまった感覚。結論、スピードも議論の真剣度も、もの凄く上がったと思います。
②その領域を志す、リーダーが現れる。
決して採用を目的に組織を分けた訳ではないんですが、結果的にビーアイシーピー・データも関西オフィスも、情熱を持った素晴らしいリーダーが責任者としてジョインしてくれました。ホントに有り難い。これは、ウチみたいなまだまだ無名の小さな会社でマネージャー職として口説いて採用するよりも、ビーアイシピー・データなら社長、関西オフィスならオフィス責任者(執行役員)というポストを用意してお招きする方が、優秀な方(もう身内なので褒めるのもアレですがw)にとってもチャレンジングな機会として魅力に感じていただけるのだ、と身をもって感じました。本気の人が来てくれる。優秀な人材を確保したいなら、相応のポジションを用意する、が大事だと改めて実感しました。
③その領域に特化した、自分たちの存在目的を再考する。
これ、組織を立ち上げる以上、目的や理念というのは先にあって然るべき、というのがべき論的な話なんですが、でも実際は立ち上がってから考えが固まっていくのをBICPの創業においても体感したんですよね。5年間で会社の考えが少しずつ高次なものに変わってきている。なので、特に僕らのような小さい会社はその機敏性を活かして、オポチュニティを感じたら、まずは張ってしまう=先に組織の箱を作ってしまう、潔さが大事だと思ってます。オポチュニティを感じている時点で、だいたい、その仮説って間違ってないと思うんですよね。大切なのは、実行する前にこねくりすぎない。時間が過ぎて仮説が陳腐なモノになる前に、仮説を本当の目的、理念に昇華させる時間や環境をつくることだと思います。なので、後戻りできない箱を作ってしまった方が早い。
そして、顧客の声を聴く。データにせよ、関西にせよ、よい目的をつくるためには、自分たちで頭でっかちに考えるよりも、その領域のクライアント企業の皆さん、パートナー企業の皆さんと対話をする。その領域が抱える問題について共に議論し、自分たちの考えを固めていく作業が不可欠です。で、そのテーブルにつくためには、自分たちの本気を示さないといけないと思うのです。データの会社を作った、関西に拠点を出した、その領域で新たな業を起こすのだ、というのは、僕たちの本気の行動であり、だからこそ同じ問題意識を持つ方々と、議論をする資格を得ることができるのだと考えています。
来年1月から米国で施行されるCCPAに代表されるように、2020年は、これまでの企業中心型のデータ活用を見直す動きが世界的に大きなイシューになります。ビーアイシーピー・データは、こういった背景文脈の中で、ブランドのあり様とデータに関わる作法、仕組みについて、もう一度考え直す会社です。これまで自分たちも含め業界をあげて推進してきた、みなし許諾的なデータドリブンマーケティングのあり方を、自己否定も含めてイチから見直すことは簡単ではありません。ただ、自分たちの存在目的を毎日議論する中で、意思や覚悟が生まれてきました。多分、BICPのイチ機能だったら日々の業務に流されてここまで真剣な議論は積み重ならなかったかもしれない。
関西オフィスは、先日、ようやくお披露目のセミナーとパーティを実施することができました。ご来場いただいた関西企業の皆さま、本当にありがとうございました。この日をきっかけに、多くの方と、関西固有の問題について議論がはじまっています。自分たちの存在目的を考えはじめました。東京からたまに出張して正論を言うだけでは、こういう向き合い方はできなかったんじゃないかな、と。
領域特有の問題仮説があり、箱を立ち上げる。そこに思考のリーダーシップが生まれ、新しい人との出会いが生まれ、熱量のある対話が生まれる。そんな順番です。このプロセスがとても楽しい。リスクをとって立ち上げるだけの意味がある。ビーアイシーピー・データも関西オフィスも、まだまだこれからなのですが、こんなプロセスを踏みながら、立ち上がっていく、準備、態勢はできたのではないかな、と思っています。向き合っていただいているクライアント、パートナーの皆さまのご厚意に心から感謝申し上げます。
僕たちのミッションステートメント(行動規範)の中にこんな言葉があります。
「仕事を通じて、社会との繋がりと責任を感じよう。マーケティングは社会に生きる人々をより豊かに、幸せにするものである。」
BICPグループは、特定のセールスプロダクトを持っていません。なので、クライアント、パートナー企業と「よい問題」を見つけることからスタートする、問題についてじっくり話し合う、をとても大切にしています。そのためには、やっぱり熱のある繋がり、が必要。
年末に振り返りながら、改めてそんな学びを得ることができたよい一年だったなあと、そんな思いです。
クライアント、パートナーの皆さまと、真剣に議論して、よい問題をみつけて、マーケティングという考えを使って解決する、来年もそんな一年にしたいと考えています。
今年も一年間、大変お世話になりました。2020年もBICPグループをどうぞ、よろしくお願いいたします。