MAD MAN MONTHLY REPORT

Vol.122 多極化の時代:2025年から始まる新たな5年(前編)




<1月号の目次>

◎ 新たなコンテンツ体験を実現するMSGのドーム型施設「Sphere」

◎ 【起点観測】CESに登壇したマーティン・ソレル卿の行間

◎ 多極化の時代:2025年から始まる新たな5年(前編)

◎ 多極化の時代:2025年から始まる新たな5年(後編)

◎ 【コラム】MAD MANが解説する日本でのニュース

 


多極化の時代:2025年から始まる新たな5年(前編)

新年を迎え、多くのメディアが「今年の予想」や「世界はこう変わる」といった記事を取り上げる中、MAD MANレポートでは、2025年から2030年にかけての「次の5年」を俯瞰的に見据えた洞察をお届けする。

2025年1月20日に発足した米国新政権は、早速いくつかの大統領令を発表し、新たな世界の変化を予感させている(各報道での賑わいが続く)。この変化の兆しは、日本を含む多くの国で数年後に向けて具体化し、実働へと繋がるはずだ。

1年単位の短期的な視点ではなく、より長く「次の5年」へ向けた成長や挑戦が始まる新たな可能性が開かれる。「トランプ2.0」体制に向けて、対策や警戒、摩擦の激化、強行政策、即時応対といった心理的な防御を煽る報道や記事も散見されるが、その先にある成長の可能性を見極めるためのヒントは数多く存在しており、より柔軟で多面的な未来への視点が求められる。

 

■過去のパターンから導き出される1つの方向性

2025年以降の予測として、すでに多くの人が感じている「生成AI(ChatGPTなど)」によるテクノロジーのさらなる進化とその影響は、すべての産業分野で実用化が加速する基盤(デフォルト)になると考えられる。

AI進化により派生する「働き方」「職務体系」「事業倫理」「情報管理」「日常生活」への影響は、事業者のみならず生活者にとっても予測可能な範囲内の変化であり、もはや「定番」や「定着」として捉えておこう。これらを前提とし、変化の判断基準としては、その外側に位置付ける必要がある。

一方で、「気候変動」「再生可能エネルギーへの投資」「カーボンニュートラル対応」といった環境テーマから、「世界の紛争問題」「米中・対米貿易摩擦(関税問題)」「世界的インフレ」さらには「日本国内の内政課題」に至るまで、多岐多様に及ぶテーマもあろう。

これら多岐に渡るテーマを分化・分析した上で、2025年から始まる4〜5年を起点に世界が生み出す変化として注目したいキーワードに、MAD MANレポートでは『多極化』を挙げる。

 

■経済と政治の「多極化」への移行

今後の5年間は、国家経済における「多極化への移行」が進み、それに伴い、これまでのような極端な「切り詰めた意識」からの緩和がみられる場面が増えると予想される。

この「多極化」とは、単に右や左の「二極化」の中間を指すのではなく、権力や依存が一極に集中するのではなく、多方面に「分散化」し、各主体が「自立化」していく流れを想像すると理解がしやすいだろう。

たとえば、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーンの普及時に注目された、政府や中央銀行が管理する「中央集権型」から「分散型」への移行の関心が、この概念に近いものと言える。

また、企業やスポーツ組織においてもトップダウンで統率される組織から、各社員や選手が自立的に行動する「DAO(分散型自律組織)」と呼ばれる新しい組織形態も話題になった。このような分散型のアプローチは、組織運営や意思決定においても「多極化」のイメージが掴める。

 

■一極集中の思考から広がる柔軟な概念

過去数年間で見られた偏りにつながる例として、以下のようなテーマが挙げられる。

      • LGBTQ人種区分の問題」「DEI(多様性・公平性・包括性)」
      • 「地球環境への対応(例:紙ストロー、レジ袋廃止、2030年ゼロ・エミッション目標、SDGs、カーボンクレジット市場)」
      • SNSやメディアにおける言論統制(検閲)」
      • 「外出自粛規制」

など

これらは「良かれ」と思われ推進されてきた取り組みだが、その対極的な立場について、「それはダメ(悪い)」とする二極的な判断が強く働いていた側面もあった。今後は、こうした「べき論」に基づく極端な方向性から離れ、より柔軟で多様な視点を取り入れることが求められる。

 

■多極化の実例:自動車産業におけるTOYOTAの戦略

典型的な例として、自動車産業におけるEV化への取り組みが挙げられる。2030年のEV化目標に対し、TOYOTAが継続して提唱していた「マルチパスウェイ」戦略が再び注目を集めている。

2020年から2021年にかけて、EV化の流れが急速的に進む中で「TOYOTAは遅れている」と揶揄される場面もあった。しかし、TOYOTAが一極的なEV推進にこだわらず、各地域や消費者のニーズに応じた多様な選択肢を提供する戦略は、持続可能な成長を目指す上で合理的であったと言える。

筆者の立場は、炭素排出削減の重要性を否定するものではなく、「選択と集中」や「一極化」に対する反対意見を唱えるものでもない。それよりも「一本化する必要はないですよね」という視点に立ち、各地域や消費者の判断を尊重し、多様な解決策を共存させる柔軟な考え方を提案している。この点で、TOYOTAの一貫した姿勢には芯が感じられる。

 

■「多極化」とはそれぞれの「自立化」を意味する

米国新政権は、世界各国の経済に対して「二極化対立」に基づく競争や制裁を進めるのではなく(例:対中国、対カナダ、対メキシコ)、むしろ各国(または各企業)が「自立」に向かうことを支援する姿勢を示し始めた。

メディアでは「対中国関税」や「対ロシア制裁」、または「民主党 vs 共和党」といった二極化を煽る報道が多く見受けられる。しかし、その背景ではより柔軟な「多極化」や「自立化」が進行している。

この「多極化」への流れを、メディアの影響で単純な「二極化」の視点に留めるのではなく、次の成長への可能性として提案する。

 

■「自立化」とは依存先を「多極化」すること

一般的に「自立」という言葉は、「依存」の対極として理解されがちだ。そのため、「自立と依存」というテーマになると「親にスネをかじっている子ども」の状況が想起され、親からの自立ができていない状態(依存)を「悪い」と判断する二極的な解釈に陥りがちだ。

しかし、現実の人間社会や世界経済は、多様な関係や取引に依存して成り立っている。重要なのは「依存そのものを否定すること」ではなく、「依存先を多極化(分散化)することで、むしろ自立性を高める」という視点だ。依存の一極集中を避け、責任を自分で持ちながら分散型の関係を築くことが、真の自立につながると言える・・・

 

続きはMAD MANレポートVol.122(有料購読)にて

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