<11月号の目次>
◎ NY進出の成功法則:大事なのはたった2つのこと(前編)
◎ NY進出の成功法則:大事なのはたった2つのこと(後編)
◎ 「広告エージェンシー」の概念の終焉
◎ OpenAIという組織ー営利(LLC)と非営利(INC)の存在
◎【コラム】MAD MANがみる日本でのニュース
OpenAIという組織-営利(LLC)と非営利(INC)の存在
「OpenAI社」のリーダーだったサム・アルトマン氏(創業者CEO)を起点にした「解任」「辞任」「参画」「復帰」などのドラマのような展開が話題となり、ビジネス業界での関心事として駆け巡った。
サム・アルトマン氏といえば、28歳で「Y Combinator」の代表に任命され、事業の売却経験も持つなどの経歴を各報道で確認できる。経歴や過去の行動を見れば「解任されるような人物なのか」は判別できるだろう。今回の事件には何か大きな不可解な要素が含まれていそうだが、暫定CEOのハリウッド級のルックスも手伝って、報道の拡散にはうってつけな状況だ。
米国での解任劇は「金曜日」に多発する傾向がある。しかも、今回はカリフォルニア(西海岸)時間の11月17日(金)の17時頃に発表された(NY時間の20時、日本時間の18日(土)の10時)。その衝撃は土日の、ビジネスが休止している期間にゆるりと推測が深まる。11月15日のIRSへの税務申告の期限を過ぎた直後の発表というのも実は偶然ではない(後述)。
本レポートも衝撃の金曜日のあとの土日で解説をしているが、まだ辞任の議決や議事録すら登場していない状態である。今後登場する続編の前に、日本ではあまり触れられない「501-c-3※」の非営利団体という企業形態についてぜひ理解しておきたい。下記の事実から見えてくる部分は保存版として要注目だ。(※501(c)(3)の記載が正しいが、ここではハイフン接続の記載とする)
■OpenAIはLLC 2社(営利団体)とINC 1社(非営利団体)が存在する
米国の非営利団体の基礎情報として、日本でも同様の概念がある復習として整理しよう。
非営利団体も営利団体もどちらも企業(Corporation)であり、毎年IRSに収支を報告する義務がある。
非営利団体は「売上や利益を創出してはいけない」という意味ではなく、むしろ永続的な存在のために売上や寄付、利益を大きく増やすことは望ましい形である。大きな区分として株主が存在せず、純利益の株主配分の目的が存在しない。この株主配当がない点を「非営利」と称する(利益余剰金を積み上げる)。
対極の営利(目的)団体は、営利が「P/L利益を稼ぐ」という意味ではなく、最終的な利益配当を株主に行うことを「営利」と称している(日本で間違いやすい部分)。
非営利団体には株主がいないため、取締役(取締役会)は存在せず、代わりに理事(理事会)が存在する。日本の病院や学校法人では、取締役と称せずに理事や理事長の名称を使っていることが馴染み深いかもしれない。
英語(米語)で“理事”は「Trustee」と呼ばれ、“President”などの名称のお偉いさんは日本語では「役員」、英語(米語)では「Officer」と呼ばれる。Trustee(理事会)がOfficerを任命、解任する権限を持つ(今回の発表はまだTrusteeからの発表がない)。
米国の非営利団体は、IRSでのCorporation(企業)のカテゴリーとして「501-c-3」と称される。このカテゴリー企業はIRSの専用フォームで「Form990」という税務申告をおこなう。延長申請した上での最終締切は翌年の11月15日になる。
OpenAIの場合、最初に創業された「OpenAI, Inc.」が非営利団体(501-c-3)で、その後に営利企業の「OpenAI LLC」と「OpenAI GP LLC」が設立された。数億円規模の寄付だけでは、非営利団体の機関としては非常に有能な人材を引き寄せたり、開発費(兆円規模)をまかなうことが難しい。
「Inc」の名称が「稼ぎの企業」のイメージを与え、ややこしいかもしれないが、このOpenAI, Inc.が非営利団体としての中核であり、この組織での退任に関するニュースが話題になっている(図2参照)。報道の言葉遣いにおいて「取締役会の」という単語が登場する場合は、上記の区別を知らないまま(での自動翻訳)の内容に見える。
図1:Open AI自らが説明をする非営利と営利企業の構造と名称、オオモトは「Inc.」の名称組織。
左のMicrosoftからの資金流れはLLC名称のOpen AIに流れているが、このLLCを管理しているのはInc.企業。
本章ではこの企業を「Open AI LLC」の略称にて、右上の「Open AI GP LLC」と区分する。
出所)OpenAI
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Our structure
出所:https://OpenAI.com/our-structure
<以下、DeepL自動翻訳による抜粋>
第一に、営利目的の子会社はOpenAI Nonprofit(OpenAI, Inc.)によって完全にコントロールされます。非営利団体が営利目的の子会社をコントロールし、統治する権限を持つマネージャー団体(OpenAI GP LLC)を完全に所有し、コントロールすることで、これを実現しました。
第二に、理事会は非営利団体の理事会であることに変わりはないため、各理事はその使命である広範な利益をもたらす安全なAGI(汎用AI)を促進するために受託者としての義務を果たさなければなりません。営利目的の子会社は、利益を上げ、分配することが許されているが、この使命に従わなければならない。非営利組織の主な受益者は人類であり、OpenAIの投資家ではありません。
第三に、理事会の過半数は独立性を保っている。個人理事はOpenAIの株式を保有していない。OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏でさえ、直接株式を保有していない。彼の唯一の関心は、彼がフルタイムになる前にOpenAIに少額の投資をしたY Combinatorの投資ファンドを通じた間接的なものである。
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図2:2022年11月15日に提出された「2021年度」のOpenAI, Inc.によるIRSへの税務申告書。
Trustee、Officerの役割とそれぞれの報酬額(単位ドル)が報告されている。
出所)ProPublica
今回の退任などの取り決めはこのOpenAI, Inc.(501-c-3)での出来事で、まだ理事会は開催されておらず、議事録すら登場していないままの憶測で報道が駆け巡っている。理事の数も報道では6名として、その票の駆け引きを報じる媒体もあるが、少なくとも2021年度のファイルではTrustee10名、Officer5名(うち兼任3名)の状況だ(図3参照)。最終的に退任や新CEO誕生などの行き着く結果は同じでも、まだわからない状況としよう(2023年11月19日現在)。
図3:2023年10月18日(退任報道の1ヶ月前)にNew York Timesがインタビュー取材として報じた
バリュエーション12兆円規模(800億ドル)を基準にした資金調達の交渉チーム
出所)The New York Times( 2023年10月18日)Google自動翻訳 Google自動翻訳
図4で掲載されているサム・アルトマン氏は、図3の(9)番に掲載されている。ミラ・ムラティ氏はリストに名前がなく(理事資格なしで元Tesla)、グレッグ・ブロックマン氏は(7)番(元Stripe CTO)、イリヤ・サツキヴァー氏は(2)番に登場する。何やら日本の名前も見当たるがここでは横に置いておく。追記として(1)番のクリス・クラーク氏(元マウンテンビュー市長)までを主要メンバーとして名前を・・・
続きはMAD MANレポートVol.108(有料購読)にて
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