<7月号の目次>
◎ ① CFC投資とはサードパーティー市場育成の必要インフラ
◎ ② サードパーティー・マーケットプレイスを成長させるテクノロジーとトラディショナルな大手企業との相性
◎ ③ 需要が高まる調理済みミールキットとCFCの好相性
◎【MAD MAN起点観測】Netflixの北米会員数が減少へ
◎【MAD MAN起点観測】日経のコンテンツ情報はサブスク型か広告型かそれとも「双方向会話型」か
◎【コラム】スタートアップ事業のネーミングは「ローマ字」化ニ偏ルベカラズ。ローマ字の負債を考慮せよ
③ 需要が高まる調理済みミールキットとCFCの好相性
本性では前章の①②と連動して、さらに延長にある切り口をご紹介する。まずは、下記の図1を俯瞰で見てほしい。これらはすべて筆者のスマホ(Facebookアプリ)上に登場した「ミールキット事業」のユーザー獲得のための広告のスクリーンショットだ。
図1 筆者のスマホのFacebookアプリに登場したミールキットのSponsored広告のスクリーンショット
出所:筆者撮影
図1を掲載するにあたって驚いたのが、この広告露出のスクリーンショットを2021年7月22日3:01am(左上の黄色枠の拡大画像)〜3:34am(右下の黄色枠の拡大画像)の33分間で収集したが、そのスクロールの間に54社の広告が登場したことだ(約30秒に1社)。その間、ほぼダブりはなく(フリークエンシー1回)、広告露出を設定した企業54社が一通り押し込んで露出してきた。
筆者が「男性」「一人暮らし(らしい)」というようなターゲットとして狙われたのもあろうし、「深夜帯(夜中の3時)」だった(=明日のランチを考える、お腹が空くなど)ということを割り引いても、「覚えきれないほどの類似サービス」の広告がFacebook上に泳いでいるという一例だ。
日本も同様だろうとまとめサイトを調べてみると、おもしろいほどに多種多様な業種がミールキット分野に進出しているようだ。
- Amazon|Amazonフレッシュ
- イオントップバリュ|トップバリュ まるごと献立キット CooKit
- ウェルネスダイニング|ウェルネスダイニング
- オイシックス・ラ・大地|オイシックス
- オイシックス・ラ・大地|らでぃっしゅぼーや ミールキット
- コープデリ生活協同組合連合会|co-opdeli(コープデリ)
- セブン‐イレブン・ジャパン|セブンミール
- タイヘイ|タイヘイファミリーセット
- ニューアクション|TastyTable
- パルシステム連合会|パルシステム
- ヨシケイ開発|ヨシケイ
- 楽天・西友|Rakuten SEIYUネットスーパー
- 生活クラブ事業連合生活協同組合連合会|ビオサポ食材セット 生活クラブ
- 生活協同組合ユーコープ|おうちCO-OP
- 阪急キッチンエール関西|阪急キッチンエール関西
■ミールキットの先陣だった2017年にIPOした「Blue Apron」の失墜をご存知か
図2 2012年創業のミールキットの老舗「Blue Apron」
出所: https://www.blueapron.com/
「Blue Apron」は、ミールキットD2Cの「老舗」であり、現在もユーザー数は米国でも上位に存在する(図2)。
2017年の新規株式公開した時には、時価総額は(IPO当時は低空飛行と言われながらも)約2,000億円(約19億ドル)の価値を付けて、巨額の資金を調達した。その後、株価は低迷し、現在は当時の約20分の1の約90億円(約0.84億ドル)という状況だ。
Blue Apronは現在に至るまで上場以来一度も単年度黒字化しないまま、2020年の「特需」も約50億円(4,600万ドル、2020年決算)の赤字を続けている。
B/Sに積み上がった累積赤字を引いてみると、正味の株主価値は約70億円(0.63億ドル)しか残っていない(あのIPOの資金調達はどこへ!?)。特需前の2019年の営業キャッシュフロー赤字は年間18億円(0.16億ドル)であり、コンサバにこの数字を割り算で使うと、あと2〜3年しか持たないキャッシュ残高の計算になる。
図3には、Blue Apronと類似するミールキット宅配の「Hello Fresh」のカスタマー・リテンションの下降曲線(顧客離脱曲線)をNetflixや「Dollar Shave Club(ひげ剃りのサブスクでユニリーバが買収)」と比較している。
いかにミールキット事業が解約率が高いビジネスモデルなのか(人々が飽きやすいか)が理解できる。消費者側が「味見」をするかのごとく、カンタンに他社サービスに乗り換えられるのも事業を難しくしている要因の一つだ。その意味では、サブスク保証は夢のフォーマットであり、日々のレストラン業に似ている(レストラン店のサブスクが過去にどれほど存在しただろうか)。
材料だけが届いて調理が要求されるBlue Apronの失墜は誰しもが知る事例で、ミールキット業界がその後シフトしたのは、「調理済でレンジかオーブンで3分温めるだけで調理器具も食器も汚さずカンタン」というパターンだ。
個人的には、このコンビニ弁当のような「早くてカンタン便利」なパッケージは保存料や仕上がり後の食感用の「食品添加物」が多用されているはずで、果たしてそれが消費者思いなのか、それとも売れるモノを売るのが良い・・
続きはMAD MANレポートVol.80にて
ご購読のお問い合わせは、本サイトのコンタクトフォームより、もしくは、info@bicp.jp までお願いいたします。
MAD MAN Monthly Report の本編は有料(年間契約)となります。詳しくはこちらのページをご覧ください。