<4月号の目次>
◎ 暗号資産を盗まれた筆者の経験談コラム:「パスワードは自分で覚えてはいけない」
◎ LUMA Partners・IABの特別解説レポート編:
「紙芝居モデルの飴玉をさがせ」の価値(前編)
「紙芝居モデルの飴玉をさがせ」の価値(後編)
LUMA Partners・IABの特別解説レポート編:「紙芝居モデルの飴玉をさがせ」の価値(前編)
図1 LUMA Partnersが発表している「エコシステム」(カオスマップ)」の一例
「CTV((Convergent TV))」と題するテレビコンテンツを中心とした放映コンテンツのプレーヤー企業が並ぶ
出所:https://lumapartners.com
D2C事業やDNVBを語る際に、MAD MANレポートの造語として、「紙芝居」事業モデルに例えた場合の「飴玉」は何か、という比喩を使っている。このおなじみの比喩のツボについて再度確認する大特集号だ。
この「紙芝居モデル」と称した比喩には、「紙芝居」にあたる施策よりも、そもそもの事業の本当の飴玉(=将来の提供価値)は何かを考えるためのアンテナを立てる意図がある。目の前で取り組んでいる新規事業は、実は「紙芝居」に過ぎないかもしれない。「飴玉」とは何かをスッポリと抜かした横展開ばかりの事業構想かもしれない。
この「将来の提供価値」=「おおぉ!これこそ次に来るぞ」と思える「飴玉」とは何だろう、どこから生まれるのだろう。「そんな儲けのツボがカンタンに『飴玉』として解るなら苦労しない、、」と思うなかれ。ある一定のパターンで、白黒がハッキリする傾向がある。最初から「飴玉は何か」を描いておくことは非常に重要だ。ついつい目の前の売上を追いかけて立ち上がるD2C事業が大半である。
■今月号の別添資料が網羅する「紙芝居と飴玉」の俯瞰
今月号の特別編成として、以下の①②のプレゼンテーションファイルに、それぞれ日本語で筆者による解説を添えた。①②のスライド合計は100枚以上となる。
① LUMA Partners社(以下LUMA)による「State of Digital 2021」
② IAB(米国インタラクティブ広告協会、以下IAB)による「2020 IAB 250 to Watch: COVID Impact Report」
①のLUMAは、図1のカオスマップの整理で有名な投資機関(銀行)である。事業フォーカスが「Digital Media & Marketing」なので、馴染み深い。CEOのテレンセ・カワジャ氏は、ユーモアたっぷりの有名経営者だ。
図2 LUMAのテレンセ・カワジャCEO
このLUMAは業界動向を半年毎にセミナー形式で報告している。そのプレゼンテーションのファイルも公式YouTubeにて公開されている。動画の言語は英語だが、英文字幕の掲載が可能となっている。
一方、②のIABはインタラクティブ広告協会の立場であり、これまで過去に発刊した大半のレポートからは、アドテクについての取りまとめを協会として後追いしている官公庁のような働きが見えていた。
ところが一転、2018年にD2Cブランド側(広告主側)を「これぞ(インタラクティブ)メディア」として取り上げるレポートを発刊し、現在も改編を発行し続けている。
このIABの変化は、筆者からみると称賛を越えて英断とも思えるまともな動きだ。IABの「A」であるAdvertisingという領域は、もともと事業全般から見れば、非常に狭い範囲に限定してしまう言葉だった。その領域を協会として突破する動きが2018年発刊のレポートだ。
今や放送局やパブリッシャーのサイトへの広告枠を売ることだけがインタラクティブ業界とは括り切れない。消費者(一般ユーザー)側から見れば、画面に映っているコンテンツがインターネット経由でのインタラクティブなコンテンツなのか、放映電波のプッシュ放映コンテンツなのか、ケーブル経由での受信映像なのか、はたまたそれらを「コンテンツ」と呼ぶのか「広告」と呼ぶのか、はっきりした認識はなく、混ざりあった理解の状態である。
IABの「I=Interactive」という言葉すらアタリマエに浸透してしまい、敢えて言うほどの形容詞でもなくなってきた。「デジタル・マーケティング」という言葉が消えつつあるのと同じように。
IABが協会として発足した当初のカテゴリーが古くなりつつある中で、D2Cスタートアップ250社の業態を啓蒙・広報する取りまとめは、意識の転換として大きなムーブメントだ。
これは、コンテンツの価値がパブリッシャー発による取材記事や番組だけを風上とするのではなく、D2C企業側にも移転・拡大している証左と言える。人々の目(Eye Ball)がD2Cメディアにも向き始め、その価値が向上している。
■巨大M&Aを対象とする「LUMAレポート」、草の根を含むスタートアップを対象とする「IABレポート」
LUMAは、M&Aディールの間を取り持ち、その案件の金額が大きければ収益も大きくなる事業構造を持つ。その彼らの営業活動やM&A業界の振興のためにレポートは作成されている。多くのカテゴリーを網羅しているが、基本は彼らの営業資料であり、水面上の出来事の報告で大げさに書く傾向があることを理解して把握に役立ててみてほしい。
それに対して、IABのレポートはまだ見たことも聞いたこともない企業250社のレポートだ。立ち上がったばかりの企業がずらりと並ぶ。少しでも日本のMAD MANレポート読者にピンと来るように、2018年の初版のスライドを図3として添付した(※別添のIABの特別解説レポートの中にも拡大図が含まれている)。数年経過している一覧になるため、一度は聞いたことがある企業も多くあるはずで、有名と思えるロゴを黄色い枠線で囲った。
この二社のレポートを並行して読み取れば、現在進行中の出来事が大まかに見えてくる。
図3 上)IAB発行のレポート「the rise of the 21st century brand economy」
下)上図の黄色い枠線で囲んだブランドのカテゴリー
フードデリバリー |
靴・アパレル |
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女性下着 |
ミールキット |
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撮影機材レンタル |
Unilever買収ひげ剃り |
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パーソナライズビタミン |
ミールキット |
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パーソナライズファッション |
ECエージェンシー |
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セレブ発のベビー用品 |
ECプラットフォーム |
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サブスクファッション |
アルコールEC |
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植物フード |
Albertsons買収ミールキット |
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靴・アパレル |
寝具 |
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プロテイン健康食 |
Walmart買収インドEC |
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マットレス製造 |
天然素材コスメ |
||
メガネ |
女性アパレルサブスク |
||
パーソナライズビタミン |
女性生理用品 |
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ペット用品 |
オーガニックスナック |
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女性下着 |
サブスク・バターコーヒー |
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セレブ立上コスメ |
Target買収のデリバリー |
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ドイツのミールキット |
メンバー制ワインクラブ |
■「飴玉」を持つ事業とは
現在、新規で立ち上がるD2C事業やコンテンツ・サブスク事業などが、2020年のウイルス騒動をキッカケにしたリモート環境の特需のおかげで、まるで花形産業かのような記事や解説が多く見受けられる。一時だけかもしれないオンライン需要が高まったことで、「オンライン=D2C=注目株」のようなトレンドとして持ち上げられ、それを「DX」の流行り言葉とともに「株高」がさらに背中を押すという追い風祭りだ。
日本で湧き上がる和製 D2C 事業は・・・
続きはMAD MANレポートVol.77にて
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