●気づかざるデータの魅力「Magic > Logic」
●クロスメディア測定標準「100%画角で2秒」その先にあること
●<補足>「Duration Weighted Viewable Impression」という考え方が抱える課題と計算例
●データとは「規制」基準で付き合うのではなく、まずは自分の「あり方」を再考する
●DNVB買収ブランドを手放すWalmartとvMVPD事業を売却するソニー。共通する出来事とは
DNVB買収ブランドを手放すWalmartとvMVPD事業を売却するソニー。共通する出来事とは
■WalmartがDNVBブランドを一部売却する意向
Amazonの対抗馬として「唯一」のポジションにあるWalmartが、マーク・ローリ氏率いるJet.comを2016年に約3,300億円(30億ドル)買収して体内吸収して以来、数々のDNVBを買収している様子はこれまで紹介した。実は現在は「フェーズ2.0」と言える新たな動きが登場している。Walmartがマーク・ローリ氏と共に買収したDNVBのブランド群の「利益ライン」が期待した程でないと見切り、DNVBを売却「リセット」する可能性について検討している。
図1:Amazonの梱包に囲まれたWalmartが自社倉庫から配達車にて出荷する様子。
出所:Vox
Walmart USのEコマース部門は今年第1四半期、第2四半期で売上は37%の成長を果たした(米国のEC市場全体は15%の伸び)が、最終利益に関しては2019年の見積もりで約1,900億円(17億ドル)以上の損失を計上する見込みだ。2018年は約1,550億円(14億ドル)の損失を出している。Walmartの店舗ビジネスでは7,700億円(70億ドル)の利益計上なので、相当な「持ち出し」であることがわかるだろう。
DNVBとして買収した「Modcloth(ビンテージ系アパレル)」「Eloquii(大きめサイズの女性アパレル)」の業績が振るわないばかりか、DNVBの旗手であった「BONOBOS(男性アパレル)」も売却対象となり、BONOBOSは人員削減に入った。Modclothは今期のうちに売却される可能性が高い。Walmartは今季DNVBブランドの買収は中断している。
■見えない資産、自社ディストリビューションへの投資
Walmartがリセットさせる「フェーズ2.0」は、DNVBブランドの整理整頓だけでなく、Walmart全体の商流としてのD2C網の完成・強化にある。
例えば、一部報道ではWalmartがM&Aでブランドを吸収するだけでなく、自社の「Digital Native Brand」を開発した事を紹介している。2018年にローンチさせたマットレスブランドの「Allswell」がその変化の一例だ。しかしこれらの「DNVB買収か、自社ブランド育成か」という議論は末節で、木の上に実る果実の話であり、現在競争が起こっているのは目に見えない地面の下への肥料散布の方で、ディストリビューションのチャンネル競争の部分が大きい。
■デリバリー・アンリミテッド
AmazonによるPrimeの年会費サブスク・サービス(119ドル)で、(2日以内)無料配送のディストリビューションネットワークこそが、大きな資産価値を持つ競合相手なのだ。大手企業としての資本力のあるWalmartはこの部分への投資・出費が余儀なくされており、DNVBブランド単体の赤字が課題なのではない。
オンラインでのコンタクトを前提とした、リアル上でのディストリビューションのコストがWalmartのEコマース部門での赤字の最大要因のはずだ(Walmartは内訳を発表していない)。Walmartは今年、このディストリビューション構築に向けて、「Delivery Unlimited」のサービスを年会費99ドルで対抗し始めた。強豪のディスカウントストア「Target」は「Shipt」という年会費99ドルの無料配送サービスを買収して傘下に持つ。いずれも人々の毎日の買い物である「生鮮食品(グロッサリー)」を玄関のドアまで配達できるかの投資である。
注目すべき点は、最終的に消費者(生活者)に何を届けたいのかを考え、そのために深い関係を作るために現在赤字でも投下させる分野は何かを判断する事である。Amazonが牽引しつつ、WalmartやTargetはこの思考を元に、先行投資を続けている。このディストリビューション・チャンネルの構築競争は、映像コンテンツのディストリビューション・チャンネルの競争と重なる部分がある。下記はSONYの米国での事例だ。
■SONYはvMVPDの「Vue」を売却検討
SONYがvMVPD事業※である「Vue」の売却検討をはじめており、上記のWalmartのDNVBブランドの放出検討と偶然ながら似た事象に見えるので並べてみた。
※vMVPD: virtual Multichannnel Video Programming Distributors 約40〜70チャンネルのテレビ(番組)をネット経由でサブスク配信するサービス。
https://www.theinformation.com/articles/sony-explo...
図2:PlayStation Vueのトップ画面。
SONYが日本には無いサービスを米国で展開していた。
出所:Playstation
2014年11月に構想を発表し2016年より全米展開させた「PlayStation Vue」サービスは、vMVPDの「さきがけ」であった。構想当初の仮説では、北米におけるPS3およびPS4の利用者は約3,500万人。18~35歳がメインユーザーとなっていたので、目標10%=350万人の加入を取れれば、新たなCATV事業規模になれる目論見だった。現在のVue利用者数はおよそ50万世帯に留まっている。
(規模参考:350万人という規模感の参考として、日本におけるAmazon Prime Videoの利用者予測が509万人、Netflixが171万人という推定数字がある。https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1171970.html)
このPlayStation Vueの発表以降、Dish Networkが「Sling TV」(250万人)、AT&Tが「DirecTV Now」(130万人)、Googleが「YouTube TV」(150万人)のスキニーバンドル(下図3)を立ち上げた経緯がある。
図3:米国で展開されているvMVPDサービス
出所:筆者作成
スキニーバンドル=ケーブルTVの月額120ドルプランに比べて
35ドル〜70ドル程の割安なネット経由のテレビ番組配信サービスの例
売却先候補は、スポーツを中心とした同業vMVPDの『FuboTV』ではないかとされている。2019年11月には「Apple TV Plus」と「Disney +」などがローンチ予定の中で、早めの脱退判断である。
■紙芝居モデルの飴玉は何か
度々MAD MANレポートで紹介している「紙芝居モデルの飴玉による収益回収」が、依然として見えないのが「番組配信」のパイプ事業である。
「紙芝居」と例えた部分は「CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)」の投下コストであり、「飴玉」とは・・・
続きはMAD MANレポートVol.59にて
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