●<特集別冊>IABが2年連続で追いかけるD2Cビジネス概観
●着々とアンチ・アマゾン企業を束ねるマイクロソフト
●<日本事例の考察>「ハズキルーペ」は、データ・ビジネスを行っているか
●データ事業はマーケティング・サービス事業のコアか。
WPPが調査・データ会社Kantarを切り離す意味
「ハズキルーペ」は、データ・ビジネスを行っているか
日本で展開されているビジネスが、世界(海外)に先行している事例は歓迎したいが、その逆で世界市場の進歩から遅れている事例や、逆行してしまっている事例は考えどころだ。日本国内からの視点だけでは気づきにくい日本市場が「浮かれている穴」の事例を取り上げてみた。気付きにくい日本の事例の典型が「ハズキルーペ」の現状だ。日本市場で話題上昇中の「拡大鏡」=「ハズキルーペ」のマーケティング(テレビCM)やビジネス展開は、好調なマーケティングの賜物だろうか。日本ではついついCMクリエイティブへ関心が行きがちのようだが、ビジネス構造そのものに対して、違和感が大きい。例えば、購入者から集めたデータは今後どのように活用されるのだろうか。
メガネ型拡大鏡の「ハズキルーペ」の勢いが、日本でビジネス(再生)成功事例として数多く報道されているのを目にする。2007年から始まったハズキルーペの再生に向けたビジネス施策や、その一連の報道や戦略の足跡から読み取れるのは、「レガシー・マーケティング」の黄金方程式の復活だ。
1)誰もが知る「有名タレント」を使ったCMコンテンツを作成し
2)そのTVCMをTVメディアに大量投下して(100億円規模)
3)売り物であるCPG商品の扱い店鋪を日本全国規模で増やし、販売個数を増やす、
という、メディアパワーを担保にして広げる流通の棚の確保(扱い店鋪の増大)という営業施策だ。
TVCMに登場した歴代のタレントが、宝田明、石坂浩二、長谷川初範、舘ひろし、松野未佳、渡辺謙、菊川怜、武井咲、小泉孝太郎(出典Wikipedia)等のCM認知は起用するタレントの年齢層を徐々に下げつつマーケットを拡大している(と言われている)。
プリヴェ企業再生グループの子会社化した企業は、オモチャのタカラトミーから5社バルクで買収した中の1社がHazuki Company株式会社(ハズキカンパニー)であり、プリヴェ企業再生グループ傘下の小売業を営む企業である(Wikipediaより)。グループ代表で会長兼CEOが直接制作を指揮したテレビCMを大量に投入して、一気に商品の知名度を高めることに成功したとされる。この「CEOが直接CM制作に携わり、、」の報道そのものが、話題を呼ぶための仕込みである事も推測できる。
このハズキルーペがテレビCMを使って、旧来型の「認知と話題先行方式」や、「ファネル・マーケティング手法」を、無作為のターゲットに向けてテレビ広告を展開する様子。これはMAD MANレポートにて再三指摘する「ファーストパーティー・データ」の重視や、「顧客とのOne-to-One、LTVの拡大」の方向とは、まるで逆方向ではないか。確かに「拡大鏡」=「高齢者リーチの高いテレビCM」は、ファネルマーケティングとしては成立するが、現在の企業活動とは「モノを売って終わり」ではなく、購買を「契約の最初」として、そこから一生長らくお付き合いするという流れがあるはずだ。ハズキルーペは商品の色や度数に選択肢があるとはいえ「One for ALL(単一商品のマス拡販)」の物販がどこまで広がるのだろう。
■米国で成長するD2C眼鏡「Warby Parker」との大きな違い
米国で「D2C眼鏡」として有名になった「Warby Parker」は2019年2月現在、米国+カナダで88店鋪が「直営」である。Warby Parkerは医療眼鏡として提供しているので、検眼→購入のステップを踏むために、直営店鋪ではOne-to-Oneのケアが提供される。その医療眼鏡をWarby Parkerは、「ライフスタイル」として「思考フレーム」を変換させた(眼鏡屋だけにフレームを変えた)。各顧客に提案しているサービスは、四季折々のファッションの「衣替え」としての需要の掘り起こし。顧客からオプトインで入手するレンズ情報(データ)を起点にして、店鋪とオンライン上で顧客とのつながりを維持し、お届けの物流網まで「ようやく」揃ったビジネスを展開している。
これに対して、ハズキルーペは約55,358店に及ぶ取扱店があり※、実質的に日本最大の「チェーン組織のリアル店」を契約したことになる。この数からもOne-to-Oneのマーケティングが目的ではない「量販」の道が伺える。1万円以上する眼鏡は、販売累積500万本を突破し、100億円の広告宣伝費と、今後も年間100億円以上の広告費を予算として投下すると言う※。(※はホームページ上の情報)
1万円の商品が500万個売れれば、500億円の売上高になる。これに対して過去に100億円が広告費として投下されたならば、売上の比率で20%のマーケティング予算だ。さらに今年の年間「100億円」目標が上積みされるとさらに比率があがる。この費用がハズキルーペにとっての「Customer Acquisition Cost (CAC)」として計上されるだけでなく、チェーン店という「リアル店舗」へのコミッションもCACコストに含まなくてはいけない。これは当レポートで指摘するまでもなくすでに読者自身がハズキルーペのマーケティング手法に対して、「これでビジネスが成り立つのか」と疑問に思っている頃だろう。
ハズキルーペには、オンライン上で会員登録してログイン購入すれば・・・
続きはMAD MANレポートVol.51にて
ご購読のお問い合わせは、本サイトのコンタクトフォームより、もしくは、info@bicp.jp までお願いいたします。
MAD MAN Monthly Report の本編は有料(年間契約)となります。詳しくはこちらのページをご覧ください。