●米国広告主協会が策定するメディア取引透明性チェックリスト
●【特集】テレビ放映の本当の終焉
・AT&Tが衛星放送をIP放送に切り替え
・グーグルが4大ネットワークを放映するチャンネルに?
・どこまで攻めるか。AT&Tがタイム・ワーナー買収案
・今こそハリウッド。+ニューヨークとシリコンバレー
【特集】テレビ放映の本当の終焉 AT&Tが衛星放送をIP放送に切り替え
図1:上記グラフは今年のQ1時点のモバイルでの接続端末において、右側のスマホ(青)+タブレット(オレンジ)総計が、左側の車(グレー)+M2M(黄色)を上回っている。しかしこれがQ2では逆転の速報が入った。これの意味するところは、ワイヤレス接続の新デバイスが増殖しているという事だ。
2017年はテレビ(コンテンツ)がネット放送(IP放送)でどんどん視聴される幕開けの年になる。その鍵を握るのが電話通信企業だ。
日本ではほとんど報じられていないが、米モバイル回線企業のAT&Tが昨年約4.8兆円(480億ドル)で買収をした衛星放送のDirecTVのコンテンツを、ネット経由で視聴できるようにするサービスを今年9月に発表した。
これは放送&通信の歴史において非常に大きな出来事だ。2020年頃にはDirecTV契約者は衛星受信の「パラボラアンテナ(お皿)」が不要になり、IP接続に切り替わるという事だ。電話通信事業(AT&T)が衛星放送事業(DirecTV)を食った買収だったが、AT&Tが完全にDirecTVのコアであるTVコンテンツ事業を吸収・消化してしまった。2014年の買収発表時にこれを誰が予想していたのだろうか。
「テレビ」という略語はテレビ受像機からテレビ放映、テレビコンテンツ、CMと様々な意味を含みつつ、テレビ「電波放映」が大前提のビジネスモデルを指しているのがマーケティング業界での理解であった。この「電波」放映モデルは米国では難視聴地域対策もあり、「ケーブル」放映と「衛星」放映にシフトしていた。
ところが今回の発表においては、AT&Tという(モバイル)テレコム・プレーヤーによって、「テレビ」の電波放映事業やケーブル・衛星配信の事業モデルから移行して、モバイルを使った「IPネット配信」事業モデルに転換する事を意味している。巨大な「テレコム・メディア事業体」が誕生したと言っても良いだろう。
日本でもネット回線を使って「SVOD(サブスクライブ型ビデオ・オン・デマンド)のNetflix、dTV、U-NEXT、Hulu、Amazonプライムビデオなら、どれがお得か」というような関心は既に身近にあるだろう。これらのサービスはネット回線のVODで見られる「映画」と「オリジナルドラマ」用として月額を支払っているはずだ。
今回のAT&Tの発表は、例えるならAT&T(日本ならドコモ等の)のネット回線を契約していれば、上記の状況に加えて「日テレやフジ等の5大キー局」の視聴ができるようになり、スマホで「色んな月9がdTVで見られる」的なサービスが始まったようなものである。
そのサービスを受けるのにケーブルボックスを設置したり、パラボラを上げたりする必要はなく、現在の(モバイル)ネット接続(IP接続)があればデータ容量のキャップも気にせず、全地上波チャンネルを視聴できるのだ(あくまでイメージ用としての極論例)。
今後のAT&Tの「テレビ」事業は、ファイバーを含む「ケーブル」という物理的なパイプを主体とするのではなく、携帯回線とWiFiがエンドユーザーとのつながりをもたらすパイプが主体となる。ケーブルTV配信会社のコムキャストやチャーター+タイム・ワーナー・ケーブル(チャーターTWC)が携帯回線事業に「逆進出」している動きも辻褄があう。
(注:地上波放送電波が主流の日本において、ケーブルTV配信会社はオプション的な位置付けだが、米国でのこれまでのコンテンツ配信の主流はケーブルTV配信会社であった。)
コムキャストやチャーターTWCのビジネスがワイヤードの接続に依存している限りはサブスクライブによる収益は頭打ちになり、新規口座を広げるにはIoTを含めたモバイルアカウントを広げないと自社ビジネスが縮小する運命に身をおくことになる。これを表しているのが(図1)の「モノ」のワイヤレス接続が、スマホ+タブレット接続を上回った現象だ。
■政府の寡占規制も、考え方が追いつかない
振り返ってみれば、2015年4月、米連邦政府通信委員会(FCC)は、ケーブル放映のコムキャストによる同業タイムワナーケーブル(TWC)の買収を、「固定ケーブルビジネス」での寡占という狭い枠においての理由で認可しなかった(後に一回り小さいチャーターがTWCを買収した)。
ところがFCCは同年7月のAT&TのDirecTV買収には何の条件も付けずに了承している。電話屋が衛星放送屋を買収する案件なので、寡占懸念無しと判断した。FCCも2016年の状況を2015年に予想できなかったのだ。この「抜け道」が通じるなら、例えば次はコムキャストが、モバイル通信のT-モバイルあたりを買収する噂も現実味が帯びる。
実際にはコムキャストは2017年にベライゾンの回線リセール作戦でモバイル通信の事業に進出する予定だ(日本のケーブル配信会社ジェイコムは2015年10月にMVNO事業としてauのLTE網を使った「ジェイコムモバイル」を発表している)。
つまり、今後のコムキャストによる顧客のアカウントを取る営業とは、ケーブル回線やブロードバンド回線の販売だけではなく、モバイル回線の販売が成長の鍵としてファネルの入り口となる。その意味からも・・・
続きはMAD MANレポートVol.23にて
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