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フィンテックの次は「デジタル・ヘルス」、「mHealth」?
図1:グーグルが買収したDeepMindのStreamsが患者と医者を結ぶ
http://www.telegraph.co.uk/technology/2016/02/24/g...
■大きな医療の山がデジタルで動きだした
昨年のニューヨーク視察のブームは「フィンテック」だった感があるが、今年はがぜん「メディカル」の分野が忙しい。デジタル・ヘルス、あるいはmHealth(モバイルヘルス)、Digital Medicine(デジタル・メディスン)と言われる分野だ。
家の照明や室温を調整する家電、住宅部門の「スマート・ホーム」や、車の自動運転を含む「スマート・カー」等の領域も大きいが、「医療!」に関してはパイがそもそも巨大である上に、さらに「オバマケア」に代表される政府周りの予算が後押しする「高成長」分野であるので関心が高まる。
2014年1月にグーグルがイギリスのスタートアップ「DeepMind」を約750億円級(4億ポンド)で買収発表した頃から、医療部門への可能性がより騒がれはじめたと感がある。DeepMindは囲碁の世界チャンピオンを負かしてしまった、あのAI企業だ。グーグルは米国だがDeepMindの会社の拠点がイギリスである関係で、英国の国民保健サービス(National Health Service、NHS)と協力しながらのプロジェクトが進む。例えば100万枚以上の目のスキャン画像を分析し「人間が見落とす可能性のある目の病気の兆候を発見するアルゴリズム」を開発するという。
米国IBMのワトソンも負けてはいない。世界各国で医療部門の活用ニーズの記事を起こしている。日本でも先日、AIであるワトソンの解析が白血病患者の命を救ったという報道があった。「女性患者のがんに関係する遺伝子情報をワトソンに入力したところ、急性骨髄性白血病のうち、診断や治療が難しい「二次性白血病」という特殊なタイプの分析が10分で出た(8月4日日経)」という具合だ。これらは戦略的啓蒙PRと見て良いだろう。
■医療を後押しする「AIとIoTとの掛け合わせ」
先発でデジタル化が進むマーケティングや金融部門から医療部門がなぜか今になって動き出したのは、医療データの蓄積に時間がかかり、データの解釈が非常に複雑な分野だけに政府の許認可が必要だったからだ。この複雑+多岐にわたるデジタル医療のテーマを解決したのが(乱暴に凝縮要約すれば)「AIとIoTの掛け合わせ」の技術が実務的に使える段階になり、国が認めたというタイミングなのだ。
マーケティング業界であれ金融業界であれ、この「AIとIoTの掛け合わせ」がサービス(ビジネス)の流れを変化させているのは気付く所だろう。しかし気軽にテストランができるマーケティング・データやファイナンシャル・データとは違い、医療分野は「医療として効能があるか」、「命には安全か」の確証が必要だ。このテスト結果がこの2年で積み上がり、政府に認められた。そして社会の新しいインフラとして広まりつつあるのが、今年の段階だ。
現状の医療分野における情報や話題は「囲碁」であったり「白血病」であったりと、バズネタを先行させているのが実情。おかげでユーザーの関心は高まるが、ビジネスの深層を理解するには、テクノロジーへの理解とソロバン投資勘定も働かせなくてはならないので、かなり難しい。これを本章で紐解く。
■医療もPaaS/SaaS化
デジタル医療分野を「ビジネス」として考えた場合、「AIとIoTの掛け合わせ」から生まれる「サブスクリプション」のビジネス構図が徐々に大きくなっている。
今や企業が提供するのは単発の「製品」や「モノ」から、「(継続的な)サービス」に向けてシフトしている。医療分野の場合、今後は「薬」や「保険」を「品物」として提供するのではなく、健康管理を継続購買してもらうPaaS(Platform as a Service)SaaS(Software as a Service)型のサービスへシフトする。薬、保険、デバイスは継続サービスの中のパーツとなる。
図2:IBMのワトソン。写真はクイズ・ジャパディーで優勝した当時のもので、
すでに進化したバージョンが世界に点在している。
(IBMワトソンリサーチセンター:写真筆者)
■診断の高速化より、人の一生の長期モニター記録
上記IBMワトソンの白血病審査は計算機能による高速化を強調した「一瞬芸」に見える。しかし読み取るべくは、その得意芸は「時間短縮」だけが売りでは無い事だ。現在の医療デバイスを含めたIoTが成せる技の守備範囲は、「慢性的」な疾患のモニタリングや、DNAひとつひとつに至るまでの個人の身体(健康)情報を「時間軸を長くとって」データを蓄積、分析しようとする試みが大きい。本来の医療の「あるべき姿」に進み始めたと考えられる・・・
続きはMAD MANレポートVol.22にて
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