●米国広告主協会が発表した「メディア取引透明性」裏話
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米国広告主協会が発表した「メディア取引透明性」裏話
図1:DIGI DAY日本語版が、6月14日、15日、16日と連日「日本語訳」を並べている。
DIGI DAY日本語版が、またしても「直訳」だけの記事を並べている。米国では実際メディア取引の「透明性」議論は茶番劇に見えている。そもそも何をもってメディア取引の透明性を立証するのかは、広告主、エージェンシー、そしてメディア(ベンダー)の立場の違いを同時に理解していないと、どうしても接点が見つけにくい議論になりがちだ。この米国での騒ぎはどこか恣意的な事を最初に報告しておく。日本語に「翻訳」される表面的な記事だけを見て、「透明性」について日本でお馬鹿な騒ぎにならぬよう、3者(広告主、エージェンシー、メディア)から中立の立場で事前解説する。
この議論が大きくなったのは、2015年3月。WPPのメディアエージェンシーMediaComの元CEOであったジョン・マンデル氏が全米広告主協会(ANA)のメディア・リーダーシップ・カンファレンスで「リベートがはびこっている」と公言した事から、広告主(協会、ANA)としては「無視できない事態」に発展した。
「過去10年以上に渡り、キックバックが堂々と行われている」とマンデル氏は、前出カンファレンスに出席している広告主に向けて具体的な数字まで公表した。例えば「通常のメディアコミッション相場はおよそ2%だが、ボリューム比例のインセンティブ(キックバック)は9%にも上り、合計11%の利益がメディア買い付け側に入る仕組み」をスライドを使って説明している。
マンデル氏はGray~MediaComで30年のキャリアを積み、最後の10年をMediaComのCEOとして務めた「どっぷりWPPグループ」の人材(2006年退社)。マンデル氏の立場から、あたかも旧職WPP(を含む広告会社)がキックバックをもらっているかのような発言をわざわざ行なう意図を考えた方が良い。マンデル氏個人の正義といえばそれまでだが、結果的にこの騒ぎによって透明性議論が「グレーから正当化へ変色した」という印象が強い。
■マンデル発言から、広告主協で調査団が結成された
昨年のマンデル氏発言が元で、ANAは「調査団」を結成し、K2社が中立調査会社として選定され、今年のカンファレンスで「調査結果」が発表された(図2)。このレポートが発表されたおかげで、「透明性議論」があらためて記事になり、日本語訳が溢れている。
広告主単体が、自社のパートナーであるエージェンシーの不正具合を公開したりはしないが、広告主「協会」としては「実態調査」という名目で、今回は匿名の聞き取り調査を中立の第三者企業を使ってレポートを行った。
図2:6月7日に発表されたANAのメディア透明性に関する調査
出典:ANA
■“Don’t name named”(誰がやったかは、名指ししない)
続きはMAD MANレポートVol.19にて
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