●ピュブリシスがサピエントを買収〜「エージェンシーの戦略的買収と売却」とは
●一方、同時期にWPPはアドテク企業アップネクサスに資本増強
●「アドレサブルTV広告」の始動
●視聴データという「新通貨」金脈の取り合い合戦
●金融のダークプール(Dark Pool)から連想する広告のプライベートマーケットプレイス(PMP)
●デジタル・マーケティング領域のM&A、売る側の戦略
「アドレサブルTV広告」の始動
米国の広告市場において、次のテクノロジー変化が待たれる「最大で唯一」の氷山がテレビ広告費であり、いつ「雪崩」が始まるか常に注目されている。「枠」にターゲティングさせる姿勢が崩れない(旧来の)米国テレビ広告の市場は約7兆円(700億ドル)規模だ。しかし足元では「オーディエンス別」でターゲティング配信する「オンラインビデオ」がすでに約1兆円(100億ドル)市場規模に成長している。
アドレサブルTV広告とは
Addressable、=Address+able。オーディエンス別に配信できなかったテレビ広告業界で「アドレス可能な」という意味で使われ始めた言葉だ。
これまでのTV広告のターゲティングは、枠ごとに貼り付けてる年齢・性別のデモグラフィックデータを選び、せいぜい州別の地域区分で配信分けをしていた。これに対し「アドレサブルTV広告」は、近年テレビモニターに必ず添えるセットトップボックスに向けて広告配信する技術。ケーブルテレビや衛星放送を中心にセットトップボックスを契約する世帯別データを、第三者機関のデータと組み合わせて広告配信するサービスが動き出したのだ。
「個人別」ターゲティングの大御所フェイスブックが、ついにビデオ配信に力点を移した事もあり、老舗ユーチューブ・グーグル、ネットフリックス、アマゾンら「ネット事業者」が得意とするターゲティング配信の海域に、テレビ局予算の氷山が流れて来たと言えよう。テレビ局によるアドレサブルTV広告は、米国ではすでに全世帯の約3分の1の4,200万世帯(米国視聴世帯数は1億2,000 万世帯)へのリーチが可能と言われており、年内には5,000万世帯に到達する(*1)。
What Facebook’s Addressable TV Offering Means for Brands
http://www.steamfeed.com/facebooks-addressable-tv-...
テレビ局と通信会社が視聴者争奪
さすがにテレビ局が動くとその資本も桁外れに大きく、オーディエンス獲得に業界を超えた大合併が始まった。今年2月、NBCを有する米CATV最大手のコムキャストが、第2位タイム・ワーナーケーブル通信会社を4.5兆円(450億ドル)で買収した。さらに続いて米通信市場最大手のAT&Tが衛星テレビ最大手のディレクTVを4.9兆円(485億ドル)で買収するに至った。3,000万世帯単位でのテレビ番組(オンラインビデオ)視聴層のまさに陣取り合戦だ。
想像して欲しい。日本に置き換えて考えれば、NTT、ドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの通信側と、日テレ、フジ、テレ朝、TBS、テレ東などの放送側がチームを組んで、グーグル、フェイスブックらと視聴者層争奪戦を始めるようなものである。日本の放送業界には上記のような競争環境がまだ無い。
逆に言えば日本の政府が通信規制緩和傾向を進めると、競争促進に一気に進むだろう。テレビ局側、マーケター(広告主)には準備は必要と言える。具体的にはビデオリサーチやニールセンのデモグラフィック仕分けに縛られない、自社「固有」のオーディエンスのセグメントデータを保持し、サードパーティーデータと掛けあわせて「テレビの向こうの誰に」メッセージを伝えるのか、整備している企業が先行突破するだろう。
図1:米国におけるビデオ視聴者数ランキング
ケーブル、衛星、通信各社の合併をもってしてもネットフリックス1社の加入者数に及んでいない。
(データ元:ncta.com/industry-data)
ちなみに北米のフェイスブックの月間アクティブユーザーは2億人を超えている。
さらに競合同士の提携や、TVアドネットワークも誕生
トイレタリーなどの単価が低いマスマーケティングには引き続きマス広告型が向いているが、高級車や保険などの単価が高いものは有効になり、予算シフトが起こるだろう。
例えば生保会社が、アドレサブルTV広告を使って第三者データ機関のエクスペリアン、エプシロン、アクシオム等からのファイナンシャルデータを合わせ、収入別にCMエンディングの違う素材を配信したり、車部品会社が自動車点検のサービスを限られた地域の車保有者に配信したり・・・
続きはMAD MANレポートVol.1にて
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