コロナウイルスの感染拡大に備えて、BICPでは先週から在宅ワークを推奨することにしました。
で、方針決めてから一週間たったのですが、日頃から出社マストじゃなくて業務効率や集中できる環境を優先していたり、東京、大阪、岩手と拠点が様々なメンバーとリモート会議をしているので、やってみたら以前とそんなに変わってないなあという感覚もあります。ハングアウトしてると顔も見えるから寂しくないしw
と、意外とスムーズにリモートに移行できちゃったんですが、この、スムーズに移行できる要件って大きく2つあるなあと思いました。
要件その①:リモート環境を支える業務インフラ
要件その②:共通言語化されている思考のプロセス(プロセスデザイン思考)
です。
要件その①:リモート環境を支える業務インフラ
これは、今の時代、どこの企業でも導入が進んでいるんじゃないかと思います。
当社の場合は、
- 業務連絡、プロジェクトのディスカッション:Chatwork
- ファイル共有:Dropbox
- ミーティングメモ:Dropbox Paper
- リモート会議:Google Hangout
- スケジュール管理:Google Calender
を標準インフラとして使っています。
これ、揃ってるとどこにいても困ることがないんですよね。唯一あるのはハングアウトの通話品質を安定させることですかね。特に多人数でスピーカーを接続するとたまーに障害が起きたりします。これは試行錯誤中です。。(Zoomが良い!なんて話もよく聞くので詳しい方、ぜひ教えてください!)
何れにしても、日頃からインフラをクラウド化させていることで、移行はものすごくスムーズでした。
で、もう一つのほう、
要件その②:共通言語化されている思考のプロセス(プロセスデザイン思考)
どちらかというと、これが効いているなあと。日頃から意識しておいたことが、リモート環境でも仕事の品質を落とさない大きなポイントになってる。
離れていても、いま、誰が、何を考えているかの想像がつくし、ハングアウトも共通の思考の枠組みを持ったうえで瞬時にディスカッションに入れる。
マーケティング活動って考えを積み重ねるプロセスなので、その積み重ねる人の頭の中を可視化することが結構難しい。逆に、アウトプットって例えばTVCMだったり、オウンドメディアだったり、ダッシュボードだったり、モノとして明らかな場合はそれが可視化がされているので、わかりやすいですよね。
なので、アウトプットに対して、良い、悪い、の議論ってやりやすいし起こりやすいと思うのです。
プロセスデザイン思考というのは、そうではなくて、
なぜ、そのアウトプットが出てきたか、のプロセスにこそ再現性があり、だからこそプロセスの設計(デザイン)をチームで話し合い、プロセス自体をPDCAしていこう、という考え方
です。
で、僕の勝手定義ですが、マーケティング活動におけるプロセスとは、
問題の設定から解決に導くまでの思考と行動の組み合わせ、順番
を指します。
例えば、1年後の新プロダクトの発売に向けて、チーム内で3ヶ月以内に戦略を組み立てる必要があるとします。皆さんのチームには、少しのディスカッションでクイックに合意できる、3ヶ月分の思考と行動の組み合わせ、順番があるでしょうか?どういう順番で、何を調べて、何を考えて、どのようなディスカッションをしながら仮説を組み立て、プロジェクトをゴールに導くか。その時々で採用するフレームワーク、調査などの手段や道具、アウトプットすべきドキュメント、役割分担。
例えば、
目的の設定 → そのやり方
↓↑
問題と課題の整理 → そのやり方
↓↑
解決仮説の整理 → そのやり方
↓↑
ロードマップ設計 → そのやり方
↓↑
顧客理解 → そのやり方
↓↑
価値設計 → そのやり方
↓↑
市場の定義 → そのやり方
・
・
まだまだ続く
みたいな、もの。考える順番を可視化して管理可能にするもの、です。加えて、各プロセスで答えを出すために採用するフレームワークや道具の検討までを含みます。BICPのメンバーはプロジェクトがスタートする際に、半年プロジェクトなら半年分、ここの合意形成にけっこう時間をかけてます。むしろ社内ミーティングは殆どこの手の話で、一番揉めるのもここかもしれないw で、議論を尽くした結果、あ、このプロセスなら、きっと答えに導けるね、とメンバー合意ができたら解散。WBSを引いて(これも結構大事)、アウトプットはチャットでチェックバック、みたいなノリです。
繰り返しですが、マーケティング活動において、施策などのアウトプットは有形ですが、アウトプットに至る思考の積み重ねって無形ですよね?とても概念的で、人の頭の中を覗くのは難しい。だから、アウトプットの良し悪しに議論が振り回されやすい。
しかも、優れたアウトプットって人に依存しやすい。暗黙知になりやすくて再現性が低い(裏を返すと、なので、優れたマーケターの先輩方が方法論を可視化しているのだと思います)。
マーケティングチームにとって、目の前の施策の成功はもちろん大切ですが、それ以上に、今年よりも来年、来年よりも再来年、持続的により高い成果を上げられるチームに成長していくことはもっと大切です。なので、本当は、なぜ、優れたアウトプットが生まれたか、を知ることが大切ですし、なぜ、アウトプットで失敗したか、を知ることが大切です。
そのために、
プロジェクトの一番はじめに、全員でどのような思考と行動の組み合わせ、順番を採用して問題を解決に導くのか?
を話し合って仮説設計しておくこと(=プロセスデザイン)が大切なのです。
仮説、というのは、プロジェクトを進めていく中で、後戻りをして再考をしたり、やり方自体を変える必要が出てくることも当然ながらあるからです。どこまで立ち戻るのか、どこを修正するのか、迷子にならずに議論できる土台が必要です。それが仮説設計です。
で、プロセスデザインを続けると何が起こるか?
お伝えした通り、BICPでは全従業員がプロジェクト起案時にプロセスデザインをおこなっています。新しいメンバーはだいたいここで苦労するんですけど、続けてみると、組織として以下のような手応えを感じはじめます(まだまだだけど、それでも進化の過程ではある)。
1.言葉の定義や思考する順番が共通言語化されて、戦略プランニングの精度が高まる。
2.アウトプットだけでなく、プロセスの振り返りが可能になる。
3.振り返りにより、プロセスや採用する方法論自体が修練され独自のメソッドに進化する。
4.応用性のある基本的なワークフローとして組織に定着する。
5.新メンバー、パートナーにおける再現性も高くなる。
これ、書いてしまえば当たり前に見えるんですけど、実際にチームの中で機能させるのはけっこう大変です。なぜならば、プロセスって一人で持っていても意味がないから。イチ担当者でプロセスを導入しても共感が得られなかったりチーム全員がこの考えを採用することに合意できていないと機能しないからです。大きい組織になればなるほど大変です(そういう意味で、BICPは小さい会社なので比較的楽)。
なので、プロセスデザインをおこなうこと自体に、リーダーのコミットが必要です。
マーケティング活動はとても面白く、やればやるほど「無知の知」を認識することになり、本当にキリのない世界です。であればこそ、自社のマーケティングチームで全員が共有できる、共感できる、活動の進め方、もっというと独自の戦い方を持っておくことは優位に働くはずです。弊社でも上記のとおり5年間やってみた結果、当たり前なんですけどメンバーで共通言語化されているベースが進化しています。で、まだ再現性を求めていないマーケティングチームより、たぶん5年は先行しているんじゃないかなと。これってチームの競争力ですよね。
少し概念的で分かりにくかもしれませんが、共通言語化と再現性が高まるプロセスはとても楽しいので、共感できるチームの単位からでも良いのでプロセスデザインをスタートしてみることをお勧めします。
など、リモート推奨をはじめてみての、効果実感でした。
ちょうどいま、BICPでは「教科書プロジェクト」というものが発足しており、創業して5年、色々と試行錯誤を重ねてきた一連のマーケティング活動の実行プロセスや方法論のガイドブック化を進めています。これができると、新しくジョインしたメンバーや、クライアント、パートナーの皆さんも含めた共通言語化、再現性の速度が上がり、一定のベースから更に積み上げていくことができるようになります。プロジェクトは川本くんというマネージャーが担当しているんですが、仕上がりがとても楽しみです。
最後にお知らせです。
BICPでは絶賛プロデューサー、ストラテジックプランナーを募集しています。東京に加えて、関西オフィスでも募集を開始しました!マーケターとして自身で様々な思考や方法論を積み重ねたいとお考えの方、ご応募をお待ちしております。