こんにちは。“コロナ禍”を整理しながら、“New Normal” を考える「BICP ’20チャレンジ」。第6回のテーマは“コロナ禍の1年であなたの消費はどう変わった?”。不要不急の外出自粛や飲食店の営業時間自粛要請など、消費活動が大きく制限された一方、生活環境の変化で業界によっては大きく飛躍を遂げました。この1年間のメンバーそれぞれの行動を振り返りつつ、その裏に潜んでいるインサイトから、現在の消費トレンドを紐解いていきたいと思います。
今回のテーマは、BICPのプランナー伊藤とプロデューサーの広瀬、そして私、森国でディスカッションします。
コロナ禍で逗子に引っ越した広瀬のケース
森国:「BICP ’20チャレンジ」も6回目、ちょっとご無沙汰してしまいましたが、21年も張り切っていきましょう。
広瀬:思うに第3回もこのメンバーで会話しましたね(笑)。
森国:そうやね、“リモートワークは社会に流動性を生むのか?”というテーマから、多様性ある世の中に変わるといいね、いろんな出会いが生まれたらいいね、って話していたけど、実際、この1年を振り返ってどんな出会いや発見がありましたか?
広瀬:僕は昨年に逗子に引っ越してきて、今8ヶ月くらい。コロナ禍なので頻繁に外出できたわけではないですが、それでも地元で知り合いも増えて、ようやく住みやすい街に変わってきた気がします。
森国:お、それは良かったね。引っ越して色々生活も変わったと思うけど、いよいよ馴染んできた、っていう感じかな?
広瀬:はい、地元の方と話していると、その土地ならではの考え方に触れられて、自分としても「あ、それやってみたいな」とか「もっと知りたいな」とか思うことが増えたように思います。
伊藤:新しいまちで生活を続けていくにつれて、自分にとって相性がいいこと、そうでもないことがだんだんはっきりしてきたんだね。自炊はもうやめたんだよね?(笑)
広瀬:はい、結局1ヶ月程度しか続かなかったです。。新しい環境になるからと始めてみたものの、定着しないことはやっぱり定着しないんだな・・と改めて感じています。
森国:不慣れなことを続けるのは難しいよね。それでも、今でも続いていたり、何か新しく始めたことはある?
広瀬:昨年は家の中をだいぶ充実させて、家具やインテリア、観葉植物なんかも買いました。ふとした瞬間に花とかみると、案外心が落ち着くんだなっていうことに気づいて。今までの自分だったらありえない行動ですけど。
森国:自宅を充実させたいという感覚は、世の中的にも巣篭もり需要として現れたよね。ニトリが在宅勤務需要をしっかり取り込み、営業利益を3割も増加させてましたね。
ニトリ営業益34期連続最高 21年2月期、巣ごもり需要で
(日本経済新聞 2021/3/19)
広瀬:他にも投資信託のアカウントを開設しました。昨年は色々と消費が激しくて、、、ちょっと将来を見据えたほうがいいのかなって不安になってきまして。
僕はお金の管理がちょっと雑になりがちで、とりあえずゼロにならないように暮らしていければという考えだったのですが、ちょっと目の前だけを見すぎている気がしてきて。30年後とか考えたら、僕もしかしたら干からびてるかもって。
森国:おお、投資信託ね。僕は20代の頃から株や投信をやっているんだけど、オンラインでも始められる手軽さもあって、若年層を中心にネット証券の口座数が大きく増えたみたいね。
また、個人の現金・預金、株式などの金融資産が過去最高になるなど、外出の機会が減り消費が抑えられたことや、生活防衛の意識が高まった結果、使わなくなったお金を貯蓄や投資に回しているようですね。生活防衛のために投資を始めたり、投資額を増やした人が5割もいたようです。
家計の金融資産、12月末は1948兆円で過去最高、現預金が増勢=日銀
(ロイター 2021/3/18)
なぜコロナ禍で投資を始める人が増えたのか?
(IT mediaニュース 2021/2/11)
広瀬:うーん、皆さんの金融資産が増えたというのは全く実感わかないです・・・僕は、お金は増えてませんね。将来への不安から投資を始めようと思ったのは、まさにその通りですが。
伊藤:広瀬さんは新しい暮らしを始めて、その住環境に投資したんだね。消費意欲、落ちるどころか上がるっていいよね!(笑)
広瀬:そうかもしれません。コロナがもたらした不安は本当に大きいのですが、これまで感じられていた不便が一気に見える化されて、新しい生活スタイルや働き方が取り入れる方が増えていったのだろうと思います。
そういえば、今年はSUPも始めたいと思って、もうボードもウエットスーツも買っちゃって。ライフスタイルにどんどん投資するくせみたいなものが僕の中に染み付いてしまったなと感じています・・。
森国:やっぱり日本一海の似合う男を目指してるんやな!(笑)
近いうちにこんな感じでSUPデビューします!(写真はイメージです!笑)
東京への移動が減った伊藤のケース
森国:伊藤さんは、新たに買ったものなどありましたか?
伊藤:私は、岩手で働くことが定着したけれど、ライフスタイルも時間の使い方も意外と変わってないかもしれません。
働く『かたち』は変わったけれど、オンラインで朝から晩までPCとにらめっこしながら仕事をしていませんか?(笑)。打ち合わせの合間に外の景色を眺めてリラックスすることはできるけれど、田舎らしいというか、自然と触れ合うような過ごし方は平日だとそれはやっぱり難しいですよね。
森国:僕は大阪、伊藤さんは岩手、広瀬さんは東京と、お互いに遠隔で働くスタイルは定着したけど、確かに僕もずっとPCと向き合ってましたね。
伊藤:ですよね。それから、街を恋しく感じることもありますよ。コロナで色々と行動が制限されてしまって、今まで当たり前に手に入れられたものが簡単には手に入らなくなってしまったので。
通販のおかげである程度、モノは手軽に買えるけれど、落語や観劇など体験を伴う豊かな生活は今はどうしても難しいですよね。
森国:第3回のテーマの中で、コロナでリモートワークが受け入れられて、東京と岩手の2拠点で「いいとこ取り」の生活ができるようになったと話してくれたけど、一方での生活が続く中で現れてきた課題かもしれないですね。
伊藤:そうなんです、やっぱり二地域を行ったり来たりしていることで得られていたものは大きいです。
結果、無いものねだりというか、これまで大切にしてきた方々との繋がりを満たしたい、もっとコミュニケーションをとりたい!という感情が生まれて。
通販やお取り寄せでモノへの欲求を満たしつつ、今度は自分から地元の産物をギフトとして大切な方へ贈ることが私の中で密かに流行っています(笑)。贈り物には手紙を添えるので、相手を思いながら過ごす時間も含めて大切な体験かもしれません。
また、都会のものと地元のものを物々交換することもあるんです。美味しいパンが食べたいから都会のパンを見繕って送ってください、わたしは豚肉送るので、って(笑)。いろいろ想像しながら贈り合ってモノを得るって、ただ「購入する」だけでは得られない豊かさがあるのかなって。
物々交換で豚肉と一緒に送った地元のワカメと東京の友達からもらった中目黒の美味しいパン屋さんのパン
広瀬:素敵な体験ですね。羨ましいな。
伊藤:地元で採れる食材が美味しいので、それを相手にも知ってほしい!といういわば住田自慢もしたくて、色々と食材を買っては送りつけているから、私もお金が貯まっているという実感はないかも。そこは広瀬さんと似ているかな、フフ(笑)。
森国:実際に親しい人にギフトを贈るカジュアルギフトの市場は伸びてるみたいね。外出自粛によって気軽に会えなくなったことで、コミュニケーション手段としてギフトが利用されてるみたいですね。
矢野経済研究所、ギフト市場に関する調査結果を発表
(日本経済新聞 2021/1/27)
在宅勤務を除き生活環境の変化が少なかった森国のケース
広瀬:森国さんにとって、この1年で変わったことはありましたか?
森国:僕が一番変わったのは、料理をするようになったことかな。
元々、ジョギングや簡単な筋トレはしていたのですが、リモートワークが導入されて通勤が減ったことで、もっと体を動かした方が良いと思い、ジョギングの距離を伸ばしたり、筋トレの量を増やしたりしました。少し体重も増えていたので、痩せたいとも思っていたので。
ただ、結構、運動してるのに全然体重が落ちなくて、なんでだろう?と思って、健康管理アプリで普段の食事のカロリーを計算してみたら、実は食べ過ぎ飲み過ぎだっていうことが判明しました(笑)。
それがきっかけで、カロリーや糖質を意識するようになり、せめて朝食と昼食は自分で作って食生活をコントロールしようと、自分で料理をするようになったんです。
広瀬:かなり大きく生活が変わられたのですね。
森国:買い物に行って自分の朝食・昼食の食材買ったりしてますよ。
あとはちゃんと運動もね。忙しいと難しい時もありますが、ジョギングとか筋トレは続けてます。コーヒーのお湯を沸かす度に腕立て伏せをするとか、仕事の合間合間でも体を動かすこと意識してるよ。
伊藤:コーヒー飲むたびに腕立て伏せって、なんかの罰ゲームみたい!(笑)
ダイエットの成果も出てきましたか?
コーヒーを沸かす間に腕立て伏せをする森国(ブログ上の演出です!笑)
森国:3-4kg落ちたのですが、実は料理ができるようになってくると、どんどん美味しいものを作りたくなってきて。色々と作るようになって、今は下げ止まってしまった!(笑)
広瀬:なかなか思惑通りにはいかないものですね(笑)。
森国:そういえば、うちのメンバーの中でもゲームで運動する人が増えてますね。エンタメ感覚で健康管理ができるようになると、ますます手軽に運動を習慣化できるかもね。実際にテレワークの人ほど、健康意識が高まったという調査結果もあるしね。
コロナ禍で健康への意識が高まる。健康に投資するようになった人が6割
(ファイナンシャルフィールド 2020/11/16)
森国:あと、Money Forwardを始めましたね。銀行、カード、証券・投信口座の情報を一元管理できるので、毎月の収支や現在の資産状況が一目でわかるのでとても便利です。
伊藤:森国さんは家にこもっていたから、健康やお金のことなど、自分の身の回りに関心が向き、それを見える化したくなったのかもしれないですね。
森国:あー、確かに。広瀬さんは引っ越して環境が変わったし、伊藤さんは東京への移動がなくなったけど、僕は、在宅になった以外は大きな生活環境の変化はなかったので関心が自分の身の回りに関心が向いたのかもね。
3名とも、それぞれこの1年で生活のスタイルや消費の仕方が大きく変わっていました。
広瀬さんは住処が変わったことで、新しい興味・関心が喚起されて、インテリア購入、投資など今まで使わなかった消費をするようになり、伊藤さんは普段の行動範囲が制限されたことで満たされない思いが高まって、友人とギフトを贈り合う物々交換をはじめました。
僕は家にいる時間が増えたことで、身の回りのことが気になりはじめ、お金や自分の体や健康を見える化することで新しい習慣が身に付きました。
3人が新たに取り入れた消費行動や習慣は、世の中ゴトとして顕在化されたトレンドに乗っていたと思います。
コロナ禍で自らが起こした新たな行動の背景にあるインサイトを理解することにより、社会で起こっているトレンドをより深く理解したり、新しい時代のアイデアのタネを見つけるきっかけになるのではないでしょうか。