みなさん、こんにちは!BICPの森国です。“コロナ禍”を整理しながら、“New Normal” を考える、「BICP ’20チャレンジ」。
第3回目のテーマは“リモートワークは社会に流動性を生むのか?”です。
リモートワークが日常となっている人も多いのではないかと思われる今日この頃。リモートワークの普及により、地方や郊外への移住、オフィスの移転などの話題を最近よく耳にします。
「コロナ時代、地方こそ利点」移住決断の起業家に聞く
(日本経済新聞 2020/5/26)
東京に住む意味ってある?家賃高く、部屋も狭すぎる…コロナで「地方移住」に注目集まる
(Business Insider 2020/7/1)
パソナ 都内の本部機能の一部 社員1200人 淡路島に移転へ
(NHK 2020/9/1)
テレワークで地方移住、最大100万円補助 政府21年度から
(日本経済新聞 2020/9/25)
「東京一極集中解消」と「地方創生」というテーマは、かれこれ20年以上、問題解消のための議論がなされているものの、問題が解消されるどころか、ますます東京への一極集中が進んできました。ところがコロナ禍をきっかけに東京から郊外や地方に人や企業が移動する動きが出始めています。
リモートワークの普及だけで、一極集中が解消されるものではありませんが、リモートワークが多くの企業で定着すると、極端な話、どこに住んでいても、仕事に差し支えがない、という状況が生まれるため、結果として、働く場所、住む場所を自由に選べることにつながり、社会の流動性が高まるのではないかと期待しています。
今回のBICPチャレンジ’20では、コロナ以前より2拠点で2つの仕事を行なっている伊藤とコロナ禍をきっかけに都内から逗子に引っ越した広瀬とのディスカッションを通して、地方や郊外に住むことの良さや社会の変化について一緒に考えていきたいと思います。
メンバー紹介
●1人目:BICP関西オフィス 森国
関西オフィス責任者、兼ツッコミ担当執行役員。ボケ担当の相方を募集中。リモートワーク続きで少し刺激が足りない今日この頃。趣味はビール。
●2人目:BICPプランナー 伊藤
コロナ禍以前より2拠点に住居を構えるリモートワーカー、2つの仕事の掛け持ち二足のワラジスト。
●3人目:BICPプロデューサー 広瀬
コロナ禍をきっかけに、都内から逗子に引越し。リモートワークの恩恵をかみしめつつ、おうち時間の充実に余念が無い。刹那的に生きている。
リモートワークによる仕事や生活の変化
森国:広瀬さんはコロナ禍をきっかけに都内から逗子に引っ越したけど、引越ししようと思ったきっかけは何ですか?
広瀬:きっかけは、まず、都内で借りていた家の契約更新のタイミングがきたこと、さらにリモートワークでずっと家で仕事していると空間的に部屋が急に狭いと思いだし、とても閉塞感を感じたことですね。なので、広い部屋に引っ越そうと思いました。
伊藤:いつまでリモートワークが続くか分からないのに、引っ越すことに不安はなかった?
広瀬:確かに迷いはありました。ずっとリモートワークが続くかどうかもわからなかったので。でも最後の決め手は、契約更新通知が来たら、家賃が値上がりしてたことでした。だったら出て行こう!と決めました。(笑)
森国:伊藤さんは、コロナ禍のリモートワーク普及で何か変わりました?
伊藤:私は、以前から東京と岩手県住田町の2地域居住、かつ2拠点で仕事をしていたのですが、コロナをきっかけに東京の住まいは一旦引き払い、現在は岩手県に住んでいます。
2拠点で動いていたので、リモートワークが一般的でない時からオンラインで会議に参加する機会が多く、今は、皆がリモートワークになったことで、一人ずつの顔が見え、皆が対等にモニターに写るので議論もしやすくなりました。
以前だとオンラインで参加するのはマイノリティな存在だったのが、今は全員がオンラインで参加するので、一気にメジャーになった気分です。(笑)
森国:時代が伊藤さんに追いついた感じやね!
二足のわらじ生活
森国:伊藤さんは、以前よりBICPの仕事とは別に住田町の仕事もしていますが、そもそもダブルワークをするようになったきっかけを教えてください。
伊藤:震災があってボランティアで住田町に行くようになったのがきっかけです。住田町は津波の被害はなかったのですが、陸前高田など海沿いの町に住んでいた人たちを仮設住宅に受け入れていました。
その仮設住宅の方々への支援活動として3ヶ月に一度ほど住田町に通っていました。そのうち、住田町から委託を受けて支援活動をしていたグループに入り、月1回通うようになりました。
ずっと支援してきた住田町の仮設住宅団地
その後、団体を法人化して理事になるなど忙しく動きつつ、東京での仕事も新しい場所に動こうかなと検討していました。
ですが、当時は今のようにダブルワークが一般的でなかったので、正社員は難しいだろうと・・・、そんな時、BICPから住田の仕事を抱えたままでもいいので来たらと誘ってもらい入社しました。
そして、住田町で働く人と結婚し、そこに本格的に住まいも構え、東京と住田町の2拠点でダブルワークをする二足のわらじ生活が始まったんです!(笑)
森国:二足のわらじ生活を始めた頃からリモートワークをしてたんですか?
伊藤:いいえ。BICPに入社して約3年間ですが、当初は岩手に行く時はBICPの打ち合わせは入れずにいたんです。
でも、昨年、関西オフィスが立ち上がり、関西のクライアントさんとのオンライン会議も増えたので、岩手にいてもBICPの仕事ができるのではと思い。社内やクライアントさんの理解もあり、東京のクライアントさんとの打ち合わせも岩手からリモートで参加するようになりました。
逗子に引っ越して変わったこと
森国:次に、広瀬さん、素朴な質問だけど、なぜ引越先は逗子にしたのですか?
広瀬:自然に近いところに住みたい、という漠然とした思いが前々からあって。僕は、宇都宮出身で、大人になってから都内に住んでいたのですが、宇都宮も地方都市ではありますが、特に自然が豊かという訳ではなく。もちろん都内も自然は少ないです。
なので一度、自然が豊かなところ、特に海のそばに住んでみたいと思ってました。何しろ、海なし県の出身なので、海への憧れがあったのかも。(笑)
いくつかの町を検討しましたが、都内へのアクセス、環境、住宅の条件で逗子に決めました。
伊藤:以前、都内の住んでいたところでは、地元にコミュニティがあったんですよね?仲の良い地元の飲み仲間というか。
広瀬:そうですね、毎日外食していて、一緒に飲食を楽しむ地元コミュニティがあったんです。
引っ越すことで、コミュニティの仲間とは離れる訳ですが、それでも引越しをしようと思ったのは、自分の人生を考えたら、自然豊かな土地に引っ越す機会はもうないと思ったから。別に仲間に会えなくなるわけでもないし、リモートワークになっているこの機会に引っ越そうと。
森国:引っ越して変わったことはある?
広瀬:まず、自炊するようになりました。今までは、オフィスの行き帰りがあって、帰ってから作るのは面倒だったので、100%外食でした。でも今は在宅勤務なので、料理する時間があるのと、下手するとオフになる時がなくズルズルと仕事をしてしまうので、料理を作ることで仕事のスイッチをオフにするようにしています。
あと、高い酒を買いまくってます!とにかく、おうち時間を充実させたいので!(笑)
自炊ネタ以外では、自転車も買いました。休みの日や平日夜に自転車で海沿いをサイクリングしてます。とても気持ちいいですねー。
森国:引っ越して随分行動が変わったんやね!そのうち日本一、海が似合う男になるんちゃう?!(笑)
休みの日や平日夜に自転車で海沿いをサイクリング
移住先でのコミュニティとの関わり
伊藤:行動以外で何か変わった事はある?逗子で新しい出会いがあったとか。
広瀬:まだ引っ越したばかりで、まだ、新しい出会いはないです。
でも、新しい街での生活が楽しくなれるかどうは、コミュニティに属することができるか、どうか、かと。人間関係ができると街も好きになると思うんです。逗子にはどういう人がいるのかな、とか、新しい人との出会いも楽しみで引っ越したので。
ずっと同じ街に住んでいると、同じ人たちとの付き合いが続くので、新しい出会いが欲しかったんです。違う世界を見たかったというか。
伊藤:地域の人たちと関わりがあるっていいよね。どこに住むかも大事だけど、どんな人がいるかも大事だと思う。
広瀬:逆に伊藤さんは、コロナ禍になって生活の変化はありますか?
伊藤:まず、移動がなくなったのでずっと住田町にいるのですが、いいとこ取りの生活ができるようになったなぁ、と。
森国:いいとこ取りの生活とは?
伊藤:東京の仕事をしながら、住田の豊かな環境で暮らせる生活ですね。
例えば、仕事の合間に、家の前のきれいな川を眺めながら美しい風景に癒されたり。
近所の人から新鮮な野菜もらったり、道を歩いていたら家においでと声を掛けられて、お茶したり。
なんて豊かなんだろうと。
先日は、イチゴをたくさんもらったので、それを近所の人にお裾分けであげたら、また別のものをもらうという、わらしべ長者みたいなこともありましたよ。(笑)
地方は、経済的にも決して恵まれてるとは言えないし、都市部と比べて情報や教育格差は大きいと思います。でも、一周回って地方の方が豊かなんじゃないかと思いますね。お米を作ったり、野菜を作ったり、みんな生きる力が強い。
東京の仕事を持ったまま、豊かな地方で暮らして、その地域にも貢献できる「いいとこ取り」の生活ができるのはリモートワークのおかげなんですよね。
自然が豊かな住田町
森国:逗子で地域のために何かしていきたい、とかはある?
広瀬:まだ、コミュニティーにも属していなく、自分の街になりきってないので、そこまでの思いはないですね。
伊藤さんのように「地域社会のために」とか、なかなかそこまでは思えなく、自分が快適に住めればいいかな、程度にしか考えてませんね。。。。こんなんでいいのかな?(笑)
伊藤:まずは、それでいいんじゃないかな?東京で稼いで、それぞれの地域でお金を使うってだけでも。
森国:そうだね、今まで都内で使っていたお金を郊外の居住地で使う人が増えるだけでも、地域経済は変わってくると思う。伊藤さんのように都内で稼いで地方で使えば、もっと変わってくるかと。
伊藤:東京の仕事をしながら、地方に暮らす人が増えることは、その地域にとってもハッピーなはず。私は、東京で稼いで、住田に納税できることを誇りに思っています。
地方移住者が増える効果
広瀬:地方に住みながら東京で稼ぐ人が増えることで、納税以外でその地域にどんなハッピーというか、プラスの効果が期待できるんでしょう?
伊藤:地方には仕事が少ないので、東京での経験を生かして新しい事業を始めると雇用が生まれたり、人と人との出会いが学びの機会になり、それがきっかけで新しい挑戦につながったりすると思ってます。仕事があると生まれ育った地元に戻ってくる人もいるでしょうし、地元を離れ東京に行く若者も減るかもしれない。
もちろん、東京から来た人も豊かな自然を感じながら仕事をする「いいとこ取り」の生活ができるので、双方にとってプラスになるのではないかと考えています。
広瀬:すごいなー。でも、本当にそうですよね。今まではオフィスに合わせて住む場所を選んでいたのですが、リモートワークが一般化すると、オフィスへの毎日の通勤を考えなくて良いので、住む場所の選択肢が広がるし、逆に住む場所に束縛されず仕事も選ぶことができる。
そうなると、必ずしも東京に集まる必要性もなくなって来ますよね。そして、東京から地方にオフィスや人が移動すると、その土地で新たな出会いから新しいビジネスや地域活性のアイデアが生まれてくるかもしれないですね。東京で得たスキルや経験を地方でダブルワークとして発揮するとその地域の発展に貢献できることも多いでしょうね。
森国:そうだね。実際に地方の副業求人も増えてるみたいだしね。
「地方の副業求人」が急増、コロナ後に約4倍に。企業は首都圏の人材確保に本腰
(Business Insider 2020/6/30)
リモートワークが普及することで、東京で稼ぎつつ、伊藤さんのように住まいのある地方で地域貢献の仕事をするというダブルワークできるし、広瀬さんのように、憧れだった自然豊かな郊外に住むこともできるようになった。そして、二人の話で共通してるな、と思うのは、当たり前だけど、人が移動すると、そこに新しい出会いが生まれるということ。
今までは人の流れが地方から東京へ、という動きだったのが、リモートワークの普及によって、都心から郊外や地方に人が動くことで、新たな出会いや気づきがあり、それが発火点となって新しいビジネスが生まれたり地域が活性化されるのではないかな、と。
地方から東京に人を集めて効率的に富を生むのが戦後復興の日本のビジネスモデルだった訳ですが、その限界はとっくに過ぎていた。でもリモートワークの普及によって、人が東京から地方に分散することで、東京にだけ集中していた富や情報が地方にも分散されることになる。その結果、日本の経済や社会の流動性が高まり、多様性が生まれるんじゃないかと思うんです。
凝り固まった社会よりも、流動性が高く、多様性が高い社会の方がイノベーションも起こるのではないかと。
リモートワークの普及だけで、流動性と多様性の高い社会に急激に変化する訳ではないと思いますが、そのきっかけとなり得る新しい働き方なのではないかと思います。