カスタマージャーニーは誰が書くのか問題。

こんにちは。BICPの菅です。

先日のアドテック東京、「もう広告代理店はいらない?次世代マーケティングのあり方を考える。」というテーマでセッションモデレーターを担当させていただきました。

おまえ広告代理店辞めた瞬間手のひら返してそんなこと言うのかよ!なんてツッコミもあったりなかったりでしたが 笑、いちおう、僕個人云々というより、国際カンファレンスの公式セッションテーマなのだ、ということで、ご容赦くださいませ(まあ、自分に向いているテーマだな、とは思いましたけど・・)。

それはさておき、セッションでの気づきとして、少し書き残したほうがよいかな、とおもったテーマがありましたので、ブログ書いてみます。

セッション自体は次世代マーケティング(何が次世代なのか?という議論もありつつ)における、事業会社と広告代理店の間にある期待値とギャップ、今後のパートナーシップのあり方にフォーカスした内容だったのですが、これらを議論するネタとして下の図「マーケティングマネジメントの実行プロセス」をチャートとして提示してみました。

マーケティングマネジメントの実行プロセス BICP

 このチャート自体は、時間軸で企業と顧客の関係を育んでいく=期待されるマーケティングの思考が変化していく中で、どのように実務を進めていけばよいのか?という実行プロセスを整理してみたものです。

  • 顧客視点で施策に連続性を持たせる
  • 施策ありきではなく、事業課題にコミットする

この2点に重きをおいて、事業・営業計画、カスタマージャーニー、基盤となるデータから施策領域をサンドイッチし、マネジメントしていこうという考え方です。

繰り返しですが、これがマーケティングマネジメントのあり方の一つと仮定した際に、事業会社、広告代理店の担うべき役割がどこにあるか、整理する目的でこのチャートを提示しました。

(余談ですが、この絵の中で、いまだに施策領域の「施策・チャネル設計」と「エグゼキューション」しかやらない広告代理店がいるとすれば、そこはしっかり見直したほうがいいですね。「エグゼキューション」における仮説が振り返り可能なものであること、PDCAを前提に可変なものに設計しておくことがとても重要です。まだまだここで頭を悩ませているクライアントは多いようです。)

 

さて、本題なのですが、このチャートをつついて議論している中でフォーカスされたポイントが、
 

カスタマージャーニーは誰が書くのか問題。


でした(結構ここで時間を使ってしまった・・)。

カスタマージャーニーといえば、若干、業界流行語あるあるに乗ってる感もあるキーワード。言ってみれば、マーケティング戦略と、実行施策の間をつなぐハブとして、カスタマージャーニーとコミュニケーションシナリオが存在するわけですが、このカスタマージャーニーの領域を事業会社と広告代理店、どちらがカバーするのか、という視点で両者の認識にギャップがあることが議論を通じてわかってきました(実際は支援会社の形態はほかにもあるのですが、セッションの構図としてこのような議論になりました)。

チャートでいうと表側の「事業・営業計画」と「施策」の間にあるゾーンです。ある意味ここがパートナーシップにおけるグレーゾーンだということが浮き彫りになりました。

具体的には、

  • 事業会社
    日々、顧客とダイレクトに接触し、リアルな事業課題・コミュニケーション課題に向き合っている事業会社が内製しないとカスタマージャーニーは書けない(もしくは書くべきだ)。
  • 広告代理店
    統合マーケティングコミュニケーションを標榜する以上、当然支援領域のスコープに入れて考えている、なので書きたい。

このギャップです。

モデレーターとしては双方の気持ち、言い分がわかる存在ではありました。僕自身(BICP)はちょうど、事業会社と広告代理店などのパートナーの間で立ち回ることが多いからです。

これについて、個人的には、べき論はともかく事業会社、支援会社がクロスオーバーで設計しないと形にしにくい(場合が多い)領域なのかな、と考えています。

理由は以下のとおりです。

  • 事業会社だけでカスタマージャーニーが書きにくい理由
     
    • 部門横断の問題
      この手の話は部門横断にならざるを得ないため、内部調整に苦労する場合が多い。部門横断で突破できるリーダーが旗を振らないと形にしにくい。逆に外部パートナーで複数部門に接点や共通言語を持っている場合、うまくコネクトできてしまう場合がある。
    • 売り手思考の問題
      どうしてもサービス、商品の提供者としてのコミュニケーションロジックに偏ってしまう場合がある。生活者・顧客視点のインサイトや行動に基づいたニュートラルなコミュニケーションシナリオ、アイデアに長けたパートナーの存在が必要な場面がある。
    • フレームワーク・メソッドの問題
      そもそも設計の仕方、ポイントも含めて、フレームワークが無い場合が多い。なので、経験のあるパートナーに相談したほうが仕上がりがよい。
    • リソースの問題
      カスタマージャーニーを本気で設計すると、それなりに体力が必要。組織の中でここにしっかりリソースを避けるか、パートナーのリソースをうまく活用したほうがスピードが上がる場合がある。
      (ワークショップ式などの簡易型の場合は除く)。
       
  • 広告代理店だけでカスタマージャーニーが書きにくい理由
     
    • ビジネス構造の問題
      広告代理店のマネタイズの源泉がメディア売上であるため、メディアに着地するジャーニーになってしまう場合が多い。逆にメディアに着地しないシナリオ設計をしてもマネタイズしにくい。よって事業ニュートラルな視点に立ちにくい。
    • 視点の問題
      広告コミュニケーションの視点に立つと、サービスや接客領域までカバーできないことが多く、リアリティのある売りの現場、商品・サービスを通じて提供する"真実の瞬間"から遠い、"美しいコミュニケーションの理想像"が上がってくる場合が多い。よって、事業会社から見るとリアリティがなく成果につながるイメージが湧かない。
    • 事業理解の問題
      そもそも、事業会社からメディア以外の顧客接点や、KGI、KPIを共有されていないケースもあり、詳細に組み立てたくても事業理解が不足していて設計できない場合がある。

など。

当日のセッションでもこのような会話が飛び交いました。事業会社から見ると、中途半端なカスタマージャーニーを持ってこられると、全然ウチのことわかっとらんなと、かえって支援会社の評価を下げてしまうこともあるようです。これ、ちょっと業界あるあるになってますね。カスタマージャーニー書いてみたけど、「ふーん、で?」で終わってしまうパターンです。一方で第三者である支援会社にこの手のディスアドバンテージがあるのは当たり前で、そこをちゃんとパートナーとして引き上げる、力を引き出す努力、理解を深めてもらうためのコミットメントが事業会社には求められるという意見も出ました。

話を戻して、カスタマージャーニーは誰が書くのかという問題。結論はどちらでも良いと思っています。でも、現時点では事業会社、特に成果にコミットしているマーケターは思っている以上に広告代理店には期待していない(その部分において)。一方、広告代理店は自分たちがカバーすべき領域(あるいはカバーしたい領域)だと考えている。そもそも、ここに大きなギャップがあるということを、まずは事実として理解することが大事なのかなと。そのうえで、今どきのマーケティングマネジメントの実行プロセスを相互にちゃんと理解・共有して、誰が何をするのか、役割、スコープを握る。そして、互いのビジネス構造、事業を理解し、交換できる価値を明確にしてからプロジェクトに取り組むことが、信頼関係を維持するうえでも、成果を上げるうえでも大切なんじゃないかなと思います。

そして、この前提を超えて、カスタマージャーニーを書くところから支援すべき、と考えるのであれば、広告代理店や支援会社は、成果を導き出すためジャーニー設計の仕方とはどうあるべきか、をカリカリに考えないと超えられないのではないかなと思います。いま、世の中に溢れているカスタマージャーニーの多くは、成果に繋がりにくい「ふわっとジャーニー」で、事業会社が求めているのは成果に繋がる「カリっとジャーニー」だということ。ジャーニーをカリカリに仕上げること。ここをプロセスとしてどうコミットするか、なのかな、と思います。

はい、BICPもがんばります。

ちなみにBICPでは、ほとんどの場合、このカスタマージャーニーを書いてから、コミュニケーションシナリオ、打ち手の設計に落とすようなワークフローで 取り組んでいます。クライアントと壁打ちしながら作る場合が多いですが、アウトプットしてから手直しをうけて仕上げる場合もあります。いずれにしても、これがないと、マーケティング施策として何をプロデュースすべきか、大きな動線課題の中で打ち手のプライオ リティがつけられなかったりするのです。なので、流行り云々ではなく、プロセスとして大切にしています。

以上、アドテック東京をちょっと振り返ってみたのと、BICP的にはカスタマージャーニーの設計は支援プロセスとしてとても重要視しているので、ちゃんと価値のあるものとして流通させたい。そんな思いもあり、少し書き留めてみた次第です。

3ヶ月ぶりのポストでした。

改めまして、 ご一緒いただいたベネッセ橋本さん、ガリバー中澤さん、大広九州月成さん、ありがとうございました。